英国伝統のスポーツカーメーカーであるMGがこのほど、受注を開始した2シーターオープンスポーツのサイバースター。今回、中国・北京のキャンプ場(十方至野)で日本メディアとして初となる市場の機会を得たのでレポートしよう。

文:ベストカーWeb編集部・渡邊龍生/写真:ベストカーWeb編集部

■MGブランドスポーツカー登場はあのMGF以来29年ぶり!

MGサイバースター。今回、北京市内で幸運にも試乗する機会に恵まれた

 由緒ある伝統のブリティッシュスポーツカーブランド、MG。英国本国では2024年4月29日から受注を開始した。ちなみに英国本国での価格は5万4995ポンド(約1075万円)という設定になっている。

 MGブランドは中国の上海汽車の傘下に入っており、MGブランドからスポーツカーが発表されたのは1995年ローバーからMGブランドが復活となったMGF以来だ。MGはもともとローバーとは個別に南京汽車に買収されていたが、今度は南京汽車が上海汽車に買収され、MGはその傘下に。

 サイバースターのボディサイズは非常にワイドで、全長4535×全幅1913×全高1329mm、ホイールベース2690mm。駆動方式はFRと4WDの2種類を設定し、車重はさすがにBEVだけあって重く、2075~2210kgとかなりの重量級スポーツとなっている。

サイバースターは全長4535×全幅1913×全高1329mm、ホイールベース2690mmでロー&ワイド

 FRモデルは最高出力340ps(ベースモデルは314ps)、最大トルク48.3kgmのモーターを搭載。前後デュアルモーター搭載の4WDモデルは544ps、最大トルク73.9kgmを発生する。その加速力はすさまじく、0-100km/h加速は3.2秒をマークするというからまあ、ハンパない。

■なぜこのクルマが注目を集めていたのか?

近未来的なボディデザインのサイバースター。出自はもともとテレビゲームの世界でインスパイアされたものだった

 さて、ではなぜMGサイバースターが世界から注目される存在になったのかについてだが、それはこのクルマがもともと「MGサイバーコンセプト」という名前のEVスポーツとして、内外装はテレビゲームの世界からインスパイアされて誕生したからだ。

 もとはMGBから多くのアイデアを採用し、テレビゲームの世界から誕生したモデルだけあり、サイバースターのエクステリアデザインはどこか浮世離れした印象も。2021年の上海モーターショーでその存在が公開され、センセーショナルなモデルとして注目されたが、まさか市販車として実際に登場するとは思わなかった人も多かったはずだ。

サイバースターのインテリア。外装にも負けないくらいインテリアも近未来的な印象だ

 ちなみにサイバースターのボディサイズだが、ライトウェイトモデルに属するマツダロードスターが全長3915×1735×1235mm、ホイールべース2310mm、車重が1010~1070kgというから、こちらは完全にふた回り以上も大きなオープンスポーツとなる。

 当初はMG Fの発展モデルとなるMG TFの後継モデルとして計画されていたのだという。それが同じオープンスポーツのBMW Z4にほど近いサイズとなったのは、大容量バッテリーを搭載するためにホイールベースが拡大されたことが背景にある。

■2トン超えの車重から予想できるとおり、軽快感はないが……

サイバースターで特徴的なのは両側ドアが斜め上に開くシザースドアを採用していること

 さて、このクルマのギミックとなる斜め上に跳ね上がる形式のシザースドアを開け、運転席に乗り込むと着座位置は思いのほか低く、オープンスポーツの雰囲気が感じられる。

 そのコックピットはドライバーにとっては囲まれ感が強い、いかにも2シーターオープン然とした佇まい。操作系に迷うこともなく、直感ですぐに理解できる印象だ。

サイバースターの両席シート。サポート性は非常に良好だった

 アクセルを開けていくと、強大なパワー&トルクを誇るBEVらしいフィールなのだが、その加速はスペックほどの過激さはなく、ちょうどいい塩梅に仕上がっている。

 もちろん、2トンを超える車重もあり、ロードスターのような軽快感はない。まあ、このあたりはボディサイズや搭載するパワートレーンの重量が違うのだから当たり前だけど……。

MGサイバースターは中国車と同様にワイドディスプレイによるエンタメ機能も抜かりない

 中国国内での価格設定はスタート価格が31万9800元(約700万円)ということで、メディア関係者によれば同国国内での販売は期待しているほどの台数はまだ受注できていないという。

 ひとまずは「MG」というブリティッシュスポーツブランドが現代に、母国英国と中国でその解答としてモダンな最適解を用意してくれたという1点だけでも敬意を表したい。

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