音楽好きなドライバーは多くいる。しかしカーオーディオシステムのアップグレードに取り組むドライバーはそれほど多くない。当連載では、その理由が「分かりづらさ」にあると仮定し、カーオーディオ愛好家を増やすべく、「分かりづらさ」の払拭を目指して展開している。

◆カー用スピーカーは、1万円台のモデルから数百万円のモデルまで価格差が幅広い…

今回は、市販カースピーカーの「価格差」について解説していく。どんな工業製品もものによって価格がさまざま異なるが、カー用のスピーカーの価格差は際立って大きい。市販カースピーカー(セパレート2ウェイタイプ)は1万円台からあり、その一方で200万円とか300万円もする超高級品も存在している。さて、ここまでの価格差が生まれるのはなぜなのかというと……。

答はズバリ、「コストを注げば注ぐほど性能を上げられるから」だ。

というのもスピーカーは、どちらかといえば“ローテク”な工業製品だ。発明されてから100年ほどが経過しているが、基本的な仕組みは発明された当時と変わっていない。磁気回路に電気を流し、フレミングの左手の法則に従って動力を生み出し、その力を振動板に伝えて空気を震わせて音を発する。

このように仕組みがシンプルである工業製品は得てして、使用部材に何を使うかや組み上げの精度にこだわることで、つまりは物量と手間をかけることで性能がどんどん高まっていく。

例えば「振動板」には、希少な金属が使われることがある。なぜならば「振動板素材」に求められる性質は複雑で、身の回りに普通にあるものでは高い要求水準に応えられないからだ。

超ハイエンドスピーカーが取り付けられたオーディオカーの一例(製作ショップ:ジパング<鳥取県>)。

◆振動板には相反する3要素が求められ、理想を追求すると希少素材に行き着く…

もう少し詳しく説明しよう。「振動板素材」には、以下の3要素が求められる。「硬さ」、「軽さ」、「響きにくさ」、この3つだ。しかし普通は、硬い素材ほど重くなり軽い素材ほど柔らかくなる。そして硬いものは叩くとよく響く(素材固有の響きを放ちやすい)。

なので理想を追求していくと、希少素材に行き着いてしまう。ダイヤモンドがその典型だ。そして理想的な性質を持つダイヤモンドで作られた振動板を備えたツイーターは、他では聴けない上質なサウンドを奏でられる。

磁気回路も同様だ。そこに使われるマグネットや銅線等の素材の素性が高くなればなるほど性能アップが果たされやすくなる。例えばボイスコイルに巻かれる銅線は、純度が高ければ高いほど信号の伝送能力が高まるので、電気信号がロスなく動力へと変換される。

またフレームも、こだわればこだわるほど性能アップが果たされる。というのもフレームには堅牢さが求められ、また振動板の裏側から放たれた音エネルギーのヌケの良さも必要となる。なので性能が追求されると素材と構造にコストが注がれることとなり高額化する。

超ハイエンドスピーカーが取り付けられたオーディオカーの一例(製作ショップ:ジパング<鳥取県>)。

◆製作工程においても、時間と手間をかけることで性能アップが果たされる!

また、性能にこだわろうとすると精密さも問題となる。ゆえに高級品ともなると、熟練のクラフトマンの手作業にて組み上げられることもある。このように製作工程においても手間と時間が費やされ、それに比例して価格もどんどん上昇していく。

ところで実をいうと、ロープライスの製品ほど価格差による性能差が開きがちだ。例えば1万5000円のモデルと3万円のモデルとでは価格差は1万5000円だが、比率でいうと倍違う。倍も違えばその差は性能にも如実に現れる。そしてそこからさらに倍の価格となる6万円のモデルともなると、一層の性能アップが果たされる。

なのでもしもスピーカー交換を実行しようと思ったら、狙い目となるモデルはエントリーグレードの製品に対して、1グレードもしくも2グレード上の製品だ。少しの予算アップで得られる満足度がぐっと高まる。参考にしてほしい。

今回は以上だ。次回以降もカーオーディオに関する「?」の解説を続行する。乞うご期待。

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