イラスト・千葉真

相談

48歳男性塾講師。学生時代のアルバイトを経て正社員で入社しました。この業界は平均年齢が若く、人員整理の話が持ち上がったため、セカンドキャリアを考えています。

長年昼夜逆転の生活をしているので、夜が中心のコンビニで正社員の店員として働こうか、あるいは貯蓄でオーナーになるのはどうだろう、と近い将来の展望を描いています。

もちろん、コンビニの仕事が厳しいことは承知しています。客とのトラブルも多く、強盗に入られる心配もあります。しかし、48歳で塾講師以外の経験はなく、ぜいたくを言える立場ではありません。人数が多く競争が激しい、新卒就職時は「氷河期」だった世代です。

この年齢で異業種への転職を考えるのは甘いのでしょうか? アドバイスをお願いします。

回答

ご相談をありがとうございます。落語家の桂宮治です。長年勤めた塾講師の仕事から転職をお考えとのこと。48歳という年齢で経験のない職業に挑戦する…不安しかないでしょう。しかし私からみれば、一つの仕事を長年続けているのは、本当にすごいこと。私は落語家になるまで、何一つまともに勤め上げることのできない人間でした。

30歳のときに動画サイトで初めて落語を見て感動し、31歳で師匠の桂伸治門下に入門しました。31歳と聞くとまだまだ若いと思われるかもしれませんが、落語界は中学校や高校を卒業してすぐに入門する人が多い世界。私が入門したときは、すぐ上の先輩が12歳年下でした。他の先輩たちもほぼ年下で、怒られたり注意されたりという前座時代を過ごしました。修業中の身分ですので、給料をもらうことはできません。

はたから見れば大変な状況かもしれませんが、私には、つらくても最高の時間でした。人生でやっと自分の居場所を見つけることができた!この世界でずっと生きていくんだ!と、貧乏ながらも夢と希望がありました。

今飛び込もうとしているコンビニ業界に、そう思えるところはありますか? 何か一つでいいので、こんな魅力があってこんな素晴らしい世界なんだと自信をもって言えるのであれば、どんな困難も乗り越えられると思います。もしそれが明確にないようでしたら、一度、他の仕事も考えてみるのはいかがでしょうか。

何かに挑戦するのに遅すぎるということはないと思います。挑戦しない人より挑戦し続けている人が素敵ですし、周りの人たちもその姿を見てきっと応援してくれるはずです。ご自身がこれだ!と思える職業に出合えることを願っています。心から応援しております。

回答者

桂宮治(かつら・みやじ) 落語家。昭和51年、東京都生まれ。化粧品実演販売のセールスマンを経て、平成20年に桂伸治門下に入門。令和3年に真打ちに昇進。4年から、日本テレビの人気番組「笑点」で大喜利メンバーを務める。

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