新商品のたれをかけた海鮮丼。生徒たちは「食べやすい」「食欲をそそる」と絶賛していた(一部画像を加工しています)=愛媛県西予市三瓶町の県立宇和高校三瓶分校で2024年5月22日、山中宏之撮影

 2024年度末で閉校が予定されている愛媛県西予市三瓶(みかめ)町の県立宇和高校三瓶分校(生徒数14人)が、地元の鮮魚店の新商品開発に携わるプロジェクトが始動した。卒業記念になればと提案した井上鮮魚店の井上裕子さん(44)は「若い柔軟な発想で活力ある商品にしてほしい」と期待する。

 プロジェクトでは生徒たちが商品名とラベルデザインを考える予定で、22日に同校で初回のワークショップ(WS)が開かれた。井上さんらが、気候変動による漁獲量の減少に伴う魚介類の価格高騰や、若者の魚離れに起因する売り上げ減少など、鮮魚店を取り巻く厳しい現状を紹介。同店では総菜製造による収入源拡大やSNS(ネット交流サービス)を活用した販売促進に取り組んでいるが、十分な利益につながっていない。

 同店では打開策として、プロジェクトのアドバイザーを務める松山市の料理研究家、中村和憲さん(59)らと2月から新商品の開発を開始。海鮮丼の「たれ」2種と、南予地域の郷土料理で甘辛く炊いた鯛(たい)をそうめんと一緒に食べる「鯛そうめん」を気軽に味わえる「つゆ」を考案した。

新商品開発プロジェクトについて説明する料理研究家の中村和憲さん(右)と井上鮮魚店の井上裕子さん=愛媛県西予市三瓶町の県立宇和高校三瓶分校で2024年5月22日、山中宏之撮影

 いずれも同市のしょうゆ会社「宇和ヤマミ醤油」のしょうゆを使う。「たれ」の1種には爽やかな酸味が特徴の三瓶産のかんきつ「ニューサマーオレンジ」の果汁を加え、生魚のにおいが苦手な人でも食べやすい味わいにしたのが特徴だ。また、「つゆ」にはこれまで廃棄されてきた鯛の中骨から取っただしを使い、食品ロスの削減にもつなげた。

 WSでは、生徒らができたてのたれをかけた海鮮丼を試食。魚が苦手という同校3年の曽我唯奈さん(17)は「たれのおかげで、魚のおいしさを知れた。たくさんの人の目に留まって、手に取ってもらえるような商品名やデザインを考えていきたい」と話した。ラベルには校名を記すことも検討しており、「総合的な探究の時間」を利用して7月までに決める予定。

 同校は生徒数の減少で23年度から新入生の募集を停止しており、現在は3年生のみが在籍している。商品は、最後の3年生が卒業する来春までの発売を目指す。【山中宏之】

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