「子どもの様子を見続けることが創作にも役立った」と話すたなかしんさん=兵庫県明石市の海岸で2024年3月28日午後0時50分、入江直樹撮影

 「キィーーー」。喃語(なんご)をマスターしつつある10カ月の長女が奇声を上げるようになった。不安に思って顔をのぞき込むとニコニコ。機嫌が悪いわけではなさそうだ。隣室の夫婦にマンション内で会った際、もしかしたら迷惑を掛けているかもと聞いてみると「いえ、楽しませてもらってます」。しっかり響いている……。だがこればかりはどうしようもない。

    ◇

 兵庫県明石市在住歴27年の画家・絵本作家のたなかしんさん(45)に子育てについて話を聞いてみることにした。たなかさんは地元の海岸の砂を下地に使う独特の画法による絵本を世に出しつつ、小学4年(9)と2年(7)の兄妹を育てる「先輩パパ」でもある。

 市の子育てサービスで重宝しているものとして明石駅前の親子交流スペース「ハレハレ」と、第2子以降の保育無料化を挙げてくれた。ハレハレはボールプールをはじめ、屋内大型遊具がそろっていて、市民なら利用無料だ。「まちに子どもに優しい人が集まっている気がする。こういう印象をつくれたことは泉さん(泉房穂前市長)の功績でしょう」といった感想も。

 2023年のクリスマス、自身の絵本200冊を市へ寄付している。市内のこども食堂など50カ所に置いてある。「できる範囲で協力したかった。本は夢を与えてくれるので、特に恵まれない子に希望のかけらを感じてもらいたい」。まさに優しさを体現している。

 「絵本は一番の知育グッズでは」と水を向けてみた。「ページをめくると物語が展開するのが脳に刺激となる。ひざに乗せて読むと、子どももぬくもりを感じて安心感にもつながる」。仕事で遅くなるとき以外は毎晩読み聞かせを欠かさず、その場で話を創って聞かせることもやっていたとか。それはさすがにハードルが高い……。

 新米ママ&パパへのアドバイスは――。

 「よく見て、よく聞いてあげること」。例えば病気。普段から注視していればちょっとした不調もすぐ気付くことができる。子どもの話だからと「はいはい」と適当にあしらいがちだが、彼らは逆に大人の言動をよく見ている。「『この人はちゃんと聞いてくれる』と思ってもらえば信頼もしてくれる」

 そう思えば長女の奇声もいとおしく感じる。トーンをやや下げてもらえるとありがたいが、しばらくは根気強く聞き続けるか。

   ◇

 縁あって明石市で子育てすることになった。「子育てのまち」で体験し、感じたことをつづっていく。【明石通信部・入江直樹】=随時掲載

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。