旧国鉄時代のカラーに塗装されたえちごトキめき鉄道の電車=新潟県上越市の直江津駅で2024年5月31日午後3時25分、神崎修一撮影
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 えちごトキめき鉄道(新潟県上越市)は5月31日上越市内の本社で取締役会を開き、鳥塚亮社長(63)が退任し、相談役に就く人事を内定した。鳥塚氏は5年間でテーマパーク開設や観光列車の運行などさまざまなアイデアで観光客を呼び込み、トキ鉄の収支改善に貢献した。今後は相談役として、観光誘客に携わる予定だ。【神崎修一】

 「就任当時にお約束したことはほぼ完了できた。コロナ禍で非常に厳しい経験をしたが、スタッフが乗り切ってくれた。鉄道を安全に正確に運行できるようになった」。鳥塚氏は取締役会終了後の記者会見で退任理由をこう説明し、トキ鉄の経営が軌道に乗りつつあることを強調した。

「ムーミン列車」や「レストラン列車」も

えちごトキめき鉄道の社長を退任する鳥塚亮氏=新潟県上越市で2024年5月31日午後4時49分、神崎修一撮影
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 鳥塚氏は外資系航空会社勤務などを経て、2009年にいすみ鉄道(千葉県)の社長に就任。「ローカル線の再生請負人」として知られ、沿線の雰囲気に合わせた「ムーミン列車」や地元産品を取り入れた「レストラン列車」など、さまざまなアイデアで同社の経営を立て直した。

 トキ鉄には19年の社長公募に応募して採用された。蒸気機関車(SL)への乗車体験などができる「直江津D51レールパーク」の開設や、昔懐かしい旧国鉄形の車両を活用した観光急行の運行など、ファンの目線を取り入れた活性化策で沿線外からも多くの観光客を呼び込んだ。日本酒や食事が楽しめる観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」はインバウンド(訪日外国人)の利用も伸ばした。

えちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」の車両=糸魚川市で2022年9月7日午後1時47分、露木陽介撮影
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 一方、赤字経営からは脱出できず、トキ鉄の2023年度収支状況は最終損益が6300万円の赤字だった。ただ前年度(2億3900万円)からは改善し、旅客収入も前年度比9%増と堅調な経営を維持した。鳥塚氏は「黒字転換はできなかったが、地域のみなさんがトキ鉄のほうを振り向いてくれるようになった。雪月花の運行などで地域への経済波及効果はあった」と振り返った。6月26日の株主総会で社長を退任する。今後は相談役としてトキ鉄や上越地方の活性化に貢献する。

 後任には国土交通省OBの就任が有力。北陸新幹線の開業でJRから分離された並行在来線は、厳しい経営環境が続きそうだ。鳥塚氏は路線バスだけで学生の通学を支えるのは難しいとの考えを示した上で「地域に根付いた会社としてある程度数字は出せた。会社として次のステップに進むべき。並行在来線問題は国の課題として解決してほしい」と述べ、国の積極的な関与を求めた。

えちごトキめき鉄道

 県や上越市、妙高市、糸魚川市などが出資する第三セクターの鉄道会社。本社は上越市にあり、愛称は「トキ鉄」。2015年の北陸新幹線開業に伴い、並行在来線をJR東日本、西日本の両社から引き継いだ。現在は日本海ひすいライン(直江津―市振間)と、妙高はねうまライン(直江津―妙高高原間)の2路線を運営している。1日の平均乗車人数は9232人(23年度)。高校生の通学など、主に地域の足として利用されている。

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