写真はイメージ=ゲッティ

 デジタル学習は、紙に比べて集中しにくく、目にも負担が大きい――。新型コロナウイルス感染拡大以降、教育現場で進むデジタル学習の良しあしを研究する富山大(富山市)学術研究部の調査チームは5月29日、デジタルのデメリットを指摘した調査結果を発表した。結果は、英国のオンライン版医学誌で発表された。

 富山大ではコロナ禍の2020年からオンラインでの講義が始まり、紙のプリントは廃止。授業が普段通りに再開した今も、紙のプリントを要望する学生は激減した。

山田正明准教授=富山市杉谷の富山大杉谷キャンパスで2021年11月12日、青山郁子撮影

 そこで、以前からネット依存の危険性を研究する同研究部医学系疫学健康政策学講座の山田正明准教授=写真=らは22年4月、医学部、薬学部の学生939人を対象に、紙とデジタル双方の「分かりやすさ」「記憶」「集中」「目の疲労」の4点について尋ね、344人から回答を得た。

 その結果、「分かりやすさ」については、紙とデジタルで差はなかったものの、「記憶」「集中」については、「紙が良い」との回答が約75%だったのに対し「デジタルが良い」は約6%だった。また、「目の疲労」ついては、約85%が「デジタルの方が悪い」と答えた。

 山田准教授によると、紙とデジタルの学習効果比較に関する研究成果はこれまでも国内外で発表されているが、いずれも「紙の方がメリットが大きい」と報告されている。しかし、今回の調査では、「情報へのアクセスが良い」「立体的な構造や音声を学べる」などのデジタルの利点も分かった。

 今回の結果を踏まえ、山田准教授は「記憶や集中に関しては、今後も紙の方が良いと考えられる」と指摘する一方、多くの学生がデジタルで目の疲労が強いと回答した点について「健康上重要な所見だ。重度の近視は将来、緑内障など失明につながる病気になりやすいことから、デジタル機器を見続けないなど目の負担を減らす必要がある」とコメントした。

 また、全国の小中学校でもICT(情報通信技術)を活用した授業が進んでいることから「紙とデジタル双方のメリット、デメリットを考慮した学習方法が望まれる」とアドバイスしている。【青山郁子】

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