家計に優しいロールケーキです。長野県飯田市の洋菓子店が6月から1個300円の価格を抑えたロールケーキを販売しています。物価高の中、「少しでも客に幸せを届けたい」との店主の思いが詰まっています。

ふっくら焼きあがったスポンジ。少し冷ましてから生クリームを塗り、県内産のイチゴをのせていきます。ゆっくり巻き上げたら冷蔵庫でいったん冷やし―

厚さ3センチにカット。仕上げにイチゴをトッピングすれば―

ロールケーキの完成です。

値段は1個300円。物価高の中で見れば手頃な価格です。

販売しているのは、飯田市の洋菓子店「マロンアップルロード店」。ショーケースの中には、かわいらしいケーキやバウムクーヘンなどが並びます。

その一角には、色とりどりのロールケーキも。価格はすべて1個300円です。

店主の佐々木悟さん(72)。客からのある声をきっかけに、6月から販売を始めました。

マロン アップルロード店・佐々木悟さん:
「『昔は(ケーキ1個)300円で買えたんだけど、もう500円だもん、なかなか買えませんよ』と言われた。お客さんもプライスカードをにらめっこして見ているのを見て、これは私も経営者じゃなくて消費者(の立場)にならなきゃいけないと思って考えた」

ウクライナ侵攻や円安の影響などで、バターや小麦などの原材料価格が高騰。店は、この2年間で3回の値上げを行い、商品の価格は2割ほど上がったということです。

そうした中、客から寄せられた「なかなか買えない」との苦しい声。佐々木さんは、客のために何ができるか考え、手頃な価格のケーキの販売を思いつきました。

選んだのがロールケーキです。他のケーキより作るのに手間がかからず、クリームやフルーツを少なくしてもおいしく食べることができます。

これまでは1本単位で販売していましたが、小分けすることで品数を増やし、価格も抑えることができます。

他にも工夫しています。一部のロールケーキのスポンジは小麦粉に安く仕入れた米粉を混ぜて使用。中に入れるフルーツも価格が落ち着いている旬のものを使い、コストを減らしています。

ただ、一番大きいのは「少しでも客に幸せな時間を届けたい」という佐々木さんの思いです。

マロン アップルロード店・佐々木悟さん:
「価格300円に設定して、利益幅はちょっと少なくなるけど、自分が消費者の立場に、そういう考えでやりだしたので、皆さんに幸せになってもらえれば、われわれ作るものが一番幸せになれるんじゃないか」

6月から販売を始めたところ、口コミなどで広まり、1日に100個ほど売れる日もあるということです。

客:
「なかなか普段買えなかったので、とてもありがたいです。たまには、おいしいものを食べたいので」
「300円はとても手ごろで、手の出しやすい良い価格だと思う。ボーナスも入り、ご褒美がてら家族で食べようかなと」

気になる味はー

(記者リポート)
「甘酸っぱいイチゴに、生クリームと、もちもちとしたスポンジケーキが合い、とてもおいしいです」

物価高の中で考えられた家計にやさしいロールケーキ。利益幅は減りますが、佐々木さんは、300円のロールケーキを続ける方針です。

マロン アップルロード店・佐々木悟さん:
「大勢の消費者の皆さんが大変な時期ですけど、ぜひ足を運んでいただいて、買い求めていただいて、幸せになってもらえば幸い」

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