京都大学丸の内セミナーは6月、市川光太郎准教授による南極の魚類に関する講義を行った。

市川准教授は、2022年に日本から南極に向けて出発した第64次南極地域観測隊に参加し、魚の生態系の調査研究を行った研究者だ。研究テーマは、「LIVING ON THE EDGE」。魚たちが、南極の極限環境でどのように生きているのかを調べている。

講義が行われた京都大学丸の内セミナーは東京駅の目の前にある新丸ビル内にある。「首都圏在住の社会人を対象とした大人のための高度な教育講座」を実施しているため、仕事終わりで受講できるよう平日の夕方に講義が行われる。大学生や高校生も参加可能だ。

今回の市川准教授の講義には、同じ第64次南極地域観測隊に同行し、メディアで初めて、昭和基地沖の海中・海底で、南極固有種の魚が餌を捕食する瞬間や、泳ぐ姿が確認されたのがとても珍しい魚など、学術的に貴重だと指摘される映像の撮影に成功したフジテレビの映像が使用された。

参加者は、大人から子供まで。オンライン含めると240人近くになった。

昭和基地周辺の海は、年間を通じて海氷に覆われている。市川准教授たち研究グループが挑戦するのは分厚い氷の下、氷点下の海に生息する魚たちの生態系だ。

調査・研究のためには、魚を釣るしかないが釣るのも大変だ。分厚い氷に穴を開けなければならないからだ。

海氷の下に生息する魚類がどの様な行動・生態をしているかは断片的な調査が行われているだけで、まだ十分ではないという。

市川准教授たちが実施する調査では、捕獲した魚に超音波バイオテレメトリーシステム(魚に取り付ける超小型超音波発信器「ピンガー」と超音波受信機)による魚類の行動観測や、魚類の採集に基づく食性・繁殖状況の評価(胃内容物・生殖腺の確認など)が主な内容だ。

フジテレビ南極取材班は、市川准教授たちが作った穴に水中ドローンを投入し、メディアでは初めて昭和基地沖の海中、海底映像の撮影に成功した。撮影された南極の魚が捕食する瞬間の映像について、市川准教授は「魚が実際にどのように捕食するかがわかる貴重なものだ」と評価。海中映像についても、「南極の海がとてもカラフルだということに驚いた」という初見での印象を話しながら、南極の海の様子を受講者に紹介した。

市川准教授は今後も南極での研究を続けていくことにしている。まだ得られていない南極の魚たちの詳細な行動に関する情報を調べることで、絶滅の可能性がある希少種の保全や生態解明に貢献すると期待されている。

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