雑草の生い茂った関東地方の空き家=空家・空地管理センター提供

 空き家の増加が社会問題化する中、神奈川県内の空き家は減っている。総務省の調査では、2023年の空き家数は46万6000戸で、18年の前回調査(48万5000戸)と比べて約4%減少。ほとんどの都道府県で空き家が増える一方、減少率は全国トップだ。なぜ神奈川は空き家が減っているのか。【葛西大博】

全国では過去最多更新 神奈川は…

 総務省の住宅・土地統計調査(速報値)によると、全国の空き家数は23年10月1日時点で約900万戸だった。前回調査に比べて約51万戸増え、過去最多を更新した。

 他方、県内の空き家は減っている。全国42都道府県で空き家数は増加もしくは横ばいだが、神奈川を筆頭に埼玉、山梨、大阪、沖縄の5府県のみで減少している。

 住宅総数に占める割合(空き家率)は、全国平均で前回比0・2ポイント上昇し、過去最高の13・8%に達した。日本の住宅の約7戸に1戸が空き家である。

 空き家率の全国トップは和歌山、徳島の両県で21・2%だった。神奈川の空き家率は9・8%で、前回(10・8%)から1ポイント減って全国45位。最も空き家の割合が低いのは沖縄県(9・3%)で、次いで埼玉県(9・4%)だった。東京都は11・0%で44位だった。

なぜ…?

 なぜ県内では空き家が少ないのか。空き家の管理や活用、相続相談などをするNPO法人「空家・空地管理センター」の伊藤雅一・副代表理事は「東京との比較で言えば、東京は新築物件の供給が全国の中で圧倒的に多い。新しい家に住みたいという需要も強いので、古い家は空き家になってしまう。一方、神奈川は東京ほど新築物件が多くはなく、県内に住みたい人は既存の中古住宅を利活用しようという傾向が強いのではないか」と指摘する。

増える団塊ジュニア世代からの相談

 同センターには、県内在住者からの空き家の相談もあるという。最近多いのは、「団塊ジュニア世代」(1971~74年生まれ)からの問い合わせだ。

 多くが50代になった団塊ジュニア世代から、高齢の親が所有する実家の相続に絡んだ相談が目立つという。「ジュニア世代の人は通勤のしやすさから都心近くに住み、郊外にある実家は不要というケースも多い。でも放置すると家は傷みが進む。売ったり貸したりすることもできなくなるので早めに対処した方がいい」と話す。

 25年には、団塊世代(47~49年生まれ)のすべてが75歳以上の後期高齢者になる。団塊世代は持ち家の割合が高いとされ、野村総研の予測では、既存住宅の撤去などが進まなければ、33年には全国の空き家率は27・3%へと上昇する。今後は県内でも、「空き家問題」は深刻化するとみられる。

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