蒸し暑い毎日が続き、熱中症対策に必須な水分補給。しかし“飲んでも飲んでも喉が渇いている”などの症状がみられたら、もしかすると「ペットボトル症候群」かもしれません。誤った水分補給をすると意識障害が起こる恐れもあるというこの病気について、専門医に聞きました。
 
話を聞いたのは、福井県済生会病院の金原秀雄内科部長です。ペットボトル症候群について「いわゆる糖分・ブドウ糖をたくさん含んでいるスポーツドリンクや炭酸飲料水を飲むことによって血糖が上がり、場合によっては意識障害のような重篤ケースがみられることがある」と説明します。
 
ペットボトル症候群は、正式には「ソフトドリンクケトーシス」といわれ「糖尿病」が急に発症する状態のことを指します。そのメカニズムについて金原医師は「糖分を多く含んだ飲料を過剰にとることにより、血液中の糖分が上がって喉が渇きやすくなり、さらにまた飲んでしまうという悪循環に陥る」と話します。
 
また血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きが低下し、体内では脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。この際に「ケトン体」という物質が体の中つくられます。
 
福井県済生会病院・金原秀雄内科部長:
「ケトン体がたくさん溜まってくると、胃のムカつきや吐き気など消化系の症状が出てくる。もっと溜まってくると、体のバランスが酸性に傾くことによって意識障害が出て、救急車で運ばれるようなことにもなる」
 
「ペットボトル症候群」の兆候には▼体重が急激に減少した▼涼しいところでもやたら喉が渇く▼尿の量が多くなり夜中にトイレに行く回数が多くなった、などが挙げられます。
 
30代から40代の、肥満気味の男性に起こりやすいといわれていますが、まれに若年層で発症するケースもあります。去年の夏、ペットボトル症候群で病院を救急受診したという、体重80キロ台の10代男性は、2~3リットルほどのソフトドリンクを数日間継続して飲んでいました。受診時は意識が朦朧(もうろう)とした状態だったといいます。
 
福井県済生会病院・金原秀雄内科部長:
「10代の後半の方で、暑い中で部活や運動をし、ソフトドリンクやスポーツドリンクをたくさん飲むようになり、胃のむかつきや吐き気の症状が強くなって救急を受診し、急激に糖尿病になった」
  
さらに、金原医師はこれからの時期、熱中症とペットボトル症候群の“Wパンチ”の危険性を指摘します。「ペットボトル症候群は血液中の糖分が上がって、たくさん尿が出てどんどん脱水になってくる。そうなるとペットボトル症候群と熱中症が合わさって重篤化することがある」と注意を呼び掛けます。
  
暑さで疲れが出て「ぐっと一気に甘い飲み物を飲みたい」という気持ちになる場合もありますが、世界保健機関WHOによると、平均的な成人で1日の砂糖の量は25g程度におさめることが望ましいとされています。清涼飲料水には、500mlのスポーツドリンクで30g、炭酸飲料で50gほどの糖分が含まれています。
 
ではペットボトル症候群にならないためにはどうしたらいいのか。金原医師によると家族に糖尿病の人がいたり、普段よく甘いものを食べる人は注意が必要とのこと。糖尿病の自覚がない人、いわゆる“かくれ糖尿病”の人も多くいて、糖分の量に気を使っていないこともあるので「定期的な健康診断で自分の健康状態を知ることが重要だ」と話していました。
  
もうひとつは、水分補給の仕方です。普段の生活での水分補給はお茶や水など糖分が含まれないものにしましょう。ただ、汗を大量にかいたり激しい運動をした後などで糖分の補充が必要な時は、スポーツドリンクなどを適切に飲むことは重要ですが、糖分を過剰にとらないことが大切だということです。正しい水分補給でこの暑い夏を健康に乗り切りましょう。

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