低額の生活保護費が振り込まれた通帳を手に、受給を巡るいきさつを振り返る女性=桐生市で2024年7月12日午後0時16分、遠山和彦撮影

 群馬県桐生市の80代女性が生活保護の受給に際し、実際には受けていない親族からの資金援助が毎月あると扱われ、本来の受給額より数万円低い生活保護費しか受け取れなかったことが判明した。低額支給は2018年6月から4年以上続いた。女性は太田市のNPO法人「ほほえみの会」と金銭管理契約を結び、毎月1万円を葬儀費用名目で引かれていたため、月約3万4000円しか手元に渡らない状態が続いた。女性は「市の窓口で暴言や威圧的対応をされ、怖くて増額を言い出せなかった。無年金で、美容院にも行けず、生活のやりくりが大変だった」と話している。【遠山和彦】

 女性は17年12月、市に生活保護の相談に行き、窓口で市職員からほほえみの会と契約するよう促され、身元引受人と金銭管理契約を結んだ。女性は当時、市街地に住んでいたが、市の担当者から山間部にある家賃2000円の福祉施設への転居を何度も促された。女性はぜんそくの持病があり、市街地の病院に通院の必要があるため難色を示すと、職員から「施設に入らなければ、生活保護申請は却下する」とすごまれたという。女性は当時のやりとりをメモに残しており、メモには「ウソつきと決めつけられて、話を聞いてくれない」「帰り道、涙が止まらない」「夜も一晩中眠れない」など苦悩をうかがわせる文言が並ぶ。

 女性は娘と長く音信不通で、生活保護受給に際して資金援助を依頼したことはなかったが、女性が知らない間に市に娘が資金援助を約束する扶養届を出したことになっていた。

 親族などから資金援助があると生活保護額は減額されるため、18年6月から始まった生活保護の受給額は月ごとに若干の変動はあるものの月約4万4000円で、ほほえみの会から1万円引かれた約3万4000円が女性の手取り額だった。

 女性は施設に転居し、市街地の病院まで月に1回電車、バスを乗り継いで通院するなど不便な生活が続いた。

 2022年11月、市は女性が親族から資金援助を受けていないことを確認し、以降は毎月約7万円が支給されるようになった。女性は「支給額がなぜ低額なのか市から説明されたことはなかった。不満を言いたくても怖くて言えなかった」と話している。

 市福祉課はこの間の経緯について「生活保護開始時に扶養届とともに本人の収入を確認している。その後、資金援助を得られていないとのことなので、支給額を増額した」と説明。また、施設への転居については「生活保護受給の条件にはしていない」と話している。女性から相談を受けた関口直久市議(共産)は「市は市民の立場に立たずに『どうにかして生活保護費を減らすか』ということに力を入れている。これでは福祉とは言えない」と批判した。

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