特集は「出版秘話」です。NBSみんなの信州の「特集」を元に2024年1月に発売された本「家族のレシピ」。がんで余命わずかとなった母と自宅で看取った家族の物語です。
書籍化を提案した幻冬舎の見城社長に話を聞きました。
■夫と2人の子に看取られ
三嶋伊鈴さん:
「3人で楽しく、やってくれるから、お母さん、心配してないから」
夫・浩徳さん:
「ありがとね、手料理おいしかったよ。あまりおいしいって言ってなかった。ごめんね、それが当たり前だったからさ」
末期のがんに侵された三嶋伊鈴さん。(享年57)
夫と2人の子に看取られ自宅で息を引き取りました。
■手書きのレシピノートを遺し
かけがえいのない日々と手書きのレシピノートを遺してー。
「NBSみんなの信州」は松本地域で訪問診療を行う瀬角英樹医師を継続的に取材。病院で別れの時間を過ごすことが難しくなったコロナ禍の期間、自宅での最期を選んだ患者と家族を見つめてきました。
三嶋家の特集は2022年12月に放送。翌年、ニュースサイトに記事を配信し、YouTubeにも動画を掲載すると多くの反響がありました。
■見城徹氏「読んでいて胸が切なく」
東京・渋谷区千駄ヶ谷―。
「幻冬舎」。
記事は、この人に目にも留まりました。
伝説の編集者とも呼ばれる幻冬舎の見城徹社長です。
幻冬舎・見城徹社長:
「毎日、夜寝る前にヤフーニュースをチェックするんですよ。なんとなく読んでいったら止まらなくなっちゃって。結構、長かったような気がするんです。それを読んでいるだけで、なんか胸が切なくなってしまって」
見城社長は角川書店の編集者を経て1993年に幻冬舎を設立。
五木寛之の「大河の一滴」、石原慎太郎の「弟」など30年で25作のミリオンセラーを世に送り出してきました。
■家族の絆、医師の信念 書籍化
三嶋家の記事を読み終えた見城社長はー。
幻冬舎・見城徹社長:
「とにかく読んだからには翌日、すぐ動こうと思って、菊地という編集者に、これ、すぐ当たってみてくれない?というふうに言ったんです。こういうこと僕、珍しいんですけど、ヤフーニュースを見ただけで、これを本にしようと思ったのは確かです」
記事の掲載から2日後、NBSに書籍化の打診、3日後には企画書がー。
見城社長の心を捉えたのは三嶋家の絆、瀬角医師の信念、そしてー。
幻冬舎・見城徹社長:
「あのレシピの書き方が、自分でイラストまで書いて、一つ一つが心がこもっている」
■明日に向かっていく決意
伊鈴さんが書いたレシピノート。
保育園の元調理師で、家でも料理を楽しんでいた伊鈴さん。三嶋家の「味」をイラスト付きで遺していました。
二人の子がノートを見ながら夕食を作る場面を、見城社長は後に動画でも見ています。
幻冬舎・見城徹社長:
「手まりシューマイなんかも、おいしそうだなと思ったけれど、ちゃんと亡くなったお母さんとまだ伝わってる、つながっているという、そういうところもグッときたし、それぞれが淡々と、それでも明日に向かって生きていくしかないっていう決意のようなものがちゃんと出ていて」
当初、書籍化に戸惑っていた三嶋家。時間をかけて、その意義を考え最終的には承諾し、追加の取材にも応じてくれました。
担当した編集者の菊地朱雅子さんです。
幻冬舎 編集者・菊地朱雅子さん:
「こちらとしても、あまりこういう話を聞くのは、特に健渡くん、小さかったですし
どうなのかなと思ったけれど、すごく一生懸命お話ししてくださって。何よりいつも笑顔で迎えてくれて、そういうところも最初に見城が、何かこの家族に感じたものというのが、こういうところにあるんだなと」
■「泣きながら最後まで読んだ」
放送から約1年。「家族のレシピ」が完成。
闘病の日々や瀬角医師のエピソードなど特集ニュースでは伝え切れなかったストーリーがふんだんに盛り込まれました。
完成した本を手にした見城社長はー。
幻冬舎・見城徹社長:
「パラパラっと読んだら止められなくなっちゃって、泣きながら最後まで読んだっていう記憶があります。人は必ず死ぬわけで、でも死んでもつながっていく、家族でいられるっていう、それが伊鈴さんの遺したものですよね」
■石原慎太郎さん、坂本龍一さんとの別れ
実はこの前後に、見城社長も大切な人との別れを経験していました。
幻冬舎・見城徹社長:
「一人は石原慎太郎(2022年2月死去)、一人は坂本龍一(2023年3月死去)、一人はきのうの朝、亡くなった親友、同い年の」
闘病の末、亡くなった3人。共に過ごした時間、交わした言葉が心に残っています。
幻冬舎・見城徹社長:
「坂本隆一には、亡くなる1カ月半ぐらい前に最後の晩餐をレストランで、来られないかなと思ったけど来て、最後の晩餐を2人でしました」
石原慎太郎さんと、親友の男性は自宅で亡くなりました。
幻冬舎・見城徹社長:
「石原慎太郎さんは、亡くなる直前まで会うことができました。きのう亡くなった親友は、たまたま亡くなる1週間前に自宅で葬儀委員長は見城がやってくれ、とかいろんなことを頼まれたりもしました。やっぱり親しい人には、亡くなる前にちゃんと何回か会っておきたいですよね」
■「死ぬことは最期を生きること」
多くの自宅での看取りを支えてきた瀬角医師はこう述べています。
訪問診療クリニック樹・瀬角英樹医師:
「死ぬんじゃなくて、その最期の日まで、その人らしく生きるんだ」
幻冬舎・見城徹社長:
「あの番組から一番もらったのは『死ぬことは最期を生きること』。その人の生き方を考えさせるものだから、読む人一人一人の人生を考えさせるものだから、読んでいるとじわじわと心に染み込んでくる本なんですよ。気が付くと、ずっと泣きながら、読み終わるという本なんですよ。だから、たくさんの人に読んでほしいなと思います」
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