海や川で子どもが溺れる事故や、救助に向かった人が溺れる事故などの水難事故が全国で相次いで発生している。専門家は「例年に比べて子どもの死亡事故が多い」との見解を示した。特にこれからの時期は「戻り流れ」に注意が必要だという。海や川での注意点について専門家に聞いた。

母親と妹を追いかけ…海で小学生が死亡する事故

新潟県村上市の瀬波温泉海水浴場で、8月10日、小学2年の男子児童がトイレに向かった母親と妹を追いかけたあと行方が分からなくなり、その後、海中で見つかったが、死亡が確認された。

瀬波温泉海水浴場
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水難学会の理事も務める長岡技術科学大学の斎藤秀俊教授は、新潟県内には以前にも同様に家族がトイレに行っている間に追いかけていった子どもが行方不明になって溺れる事故があったと言い、「トイレや更衣室に行く時、浜茶屋に何か買いに行くような時、お子さんはすべて連れて歩くようにしたいところ」と指摘した。

また、男児が家族とはぐれて一人で海に入ってしまった可能性があるとした上で、「波打ち際に近づいた時に、波に足をすくわれて、そのまま海に持っていかれたということも考えられる」と話す。

瀬波温泉海岸は、少し沖合に出るとすぐ深くなっているような構造で、5mほど沖合に行ってしまうと、小学生だと背が届かないような水深になってしまう場所だという。

海に入るつもりなくても…“戻り流れ”で被害に

斎藤教授は「戻り流れ」だった可能性も指摘。

「戻り流れ」とは、海岸で散歩している人、波打ち際で遊んでいる人、そのような人たちが突然、ちょっと高めの波が来て、そのまま海に引きずり込まれるような波のことで、海に入るつもりはない人たちが被害に遭う波だという。

戻り流れに注意

特にこれからの時期はこの「戻り流れ」による事故が頻発するという。そのため、浅瀬で遊んでいても注意が必要だ。

「遊ぶ時、親は子どもと一緒に水の中に入ってほしいが、やっぱり波浪注意報が出ている時というのは、戻り流れで海に持ってかれる可能性が大変高くなる。たとえ一緒に遊んでいたとしても、事故の確率が高くなると思っていただきたい。注意報が出ていなくても、当然、何回かに1回は強い波が来るので、そういったことは注意しないといけない。ただ、注意報が出ていると本当に事故は起こる。その注意報が出ている時・出てない時で、事故の可能性・確率は全然違うと思ったほうがいい」

子どもを助けに飛び込んでしまったら「一緒に浮いて待つ」

また、8月12日には、上越市のなおえつ海水浴場で、77歳の管理員の男性が波に流されているように見えた70歳男性の救助に向かったところ、溺れて死亡した。

全国的にも溺れている人を助けようとした人が溺れる死亡事故が相次いでいる。

なおえつ海水浴場

斎藤教授は「まず原則は、助けに行かない」と強調する。

一方で、「自分の子どもが流されて、それを追いかけない親はなかなかいない」としたうえで、「どうしても追いかけてしまう。その時には、お子さんと一緒に浮く。お子さんと一緒に浮いて救助を待つんだという気持ちで行くこと。必ず助けられるなんて思わないこと。助けようと思えば思うほど、自分の命はなくなる。だから、お子さんと一緒に浮いて救助を待つという考えならば、やむを得ず飛び込んでしまったとしても助かる可能性が出てくる。もし、飛び込んでしまったら一緒に浮いて救助を待ってほしい」と訴える。

溺れた人を見かけた際には、すぐに119番か118番に連絡をすること。そして、空のペットボトルを投げ渡して、「浮いて待っていて」と伝えることが重要だという。

川での事故も多発…“穏やかな川”は特に注意を

そして、斎藤教授は「今年は海だけでなく、川での事故が多い」と話す。特に注意が必要なのは、一見安全そうな“流れの少ない穏やかな川”だという。

「川の流れが穏やかということは、川が深いことを示している。その川の深さに気がつかずに、川岸から水の中に入っていって、突然深くなっているところで『あ、しまった』と思って戻ろうとしても戻れなくなって、そのまま溺れてしまう。川の事故は泳いでいる時に起こるのではなくて、川を歩いている時に溺れてしまう。だから、川を泳いでないから大丈夫ではなくて、川の中を歩いている段階で、いつ深みにはまるか分からない、と考えていただきたい」

「泳ぐところではない」 川遊びの注意点は?

これからの時期はゲリラ豪雨など川の上流が大雨になる可能性も高まる。そうした状況の中、川で遊んでいると、いきなり増水して流される事故があるという。

山で川遊びをしている時に「雲行きが怪しい」「遠くで雷が鳴っている」など異変を感じたら、すぐに川から上がって高いところに避難することが重要だ。

斎藤教授は何より「川は泳ぐところではない」と強調する。

「川は“川遊び”という言葉があるぐらいで遊ぶところ。遊ぶ時は、ひざ下までの水深で遊ぶ。たとえライフジャケットを着ているからといって深いところに行ってはいけない。なぜかというと、流されてしまうと、その流されたのを見て周りの人たちが飛び込んで、その人たちが命を落とすという事例もある。川遊びをする時は、ひざ下までの水深で水に浸かって遊ぶ。もし心配であれば、ライフジャケットや浮き輪を持っていく。ただ、ライフジャケットや浮き輪というのは流れの中であっという間に流されるので、それを着ているからといって深いところに行ってはいけない」

ライフジャケット着用でも深いところには行かない

“離れている台風”にも注意「海のうねりは危険」

また、台風の発生は波に大きな影響が出ることから、たとえ台風から離れた位置にいても、注意が必要だという。

台風による“海のうねり”に注意

「台風が日本海に入った時は、かなり気を付けないとダメ。日本海は九州から北海道まであるが、どこに入っても危ない。台風の風は遠く離れていると感じないが、波は違う。波は遠くの台風から来る。それは“うねり”という波で、台風の足元から出た波が、そのエネルギーそのまま伝えてくるので、遠くに台風がいるからといって、海のうねりは大丈夫だということはない。海のうねりは台風が遠くても危ないので、晴れていて風が穏やかでも、海水浴は本当に注意してほしい。高波が急に来て、海岸でその波にさらわれるという危険性があると思う時には、もう台風が日本海のどこかにあるという時。こういう時に気を付けてほしい」

楽しいレジャーを悲劇で終わらせないために…安全面に十分配慮した行動を取ることが重要だ。

(NST新潟総合テレビ)

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