7月に約5年半ぶりに全館営業を再開した道後温泉本館。再開から1カ月がたち、街には多くの観光客が訪れにぎわいを見せていた。南海トラフ地震臨時情報の余波が続く中、新たな魅力で人々を引きつける道後の街を取材した。

観光客を魅了する新旧の魅力

愛媛・松山市にある国の重要文化財「道後温泉本館」は2019年から耐震化などのため、大規模な保存修理工事を行っていたが、2024年7月11日午前6時、力強い刻太鼓の音が響く中、ついに全館営業を再開した。

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再開から1カ月、道後は夏の書き入れ時を迎えていた。埼玉県から訪れた親子連れは、道後温泉本館の魅力について、「レトロな感じがすごくいいなと思いました」「古い雰囲気を残しつつ新しくなってるし、清潔感もあるんですごくよかったです」と満足げに話していた。

他にも、「きれいですね。古くてきれい」と話す台湾からの観光客や、「すごく熱くて、良い汗かきました」と温泉の質の高さを実感した様子の観光客などでにぎわっていた。

予約が好調だという貸し切り休憩室

そして、全館営業再開に合わせて新たに設けられた2つの貸し切り休憩室は予約が好調だ。

道後温泉事務所の三神正裕さんは「本当にたくさんの予約を頂いています。特に週末やお盆の時期は8割、9割の予約を頂いている状況です」と話していた。

キャンセルは数千人規模…余波続く

しかし、8月9日に発表された「南海トラフ地震臨時情報」は、道後の観光に大きな影響を与えた。

道後温泉旅館協同組合によると、組合に加盟する約30のホテルや旅館では、宿泊キャンセルが数千人規模に上るとみられている。

道後温泉本館では、大地震が起きた際の速やかな避難誘導など、備えの再確認を実施し、観光客の安全を第一に考えた対応を行っているという。

臨時情報発表の余波は今も続いており、観光業界に大きな打撃を与えている。

都市伝説を体験できる!進化する道後

一方で、道後温泉本館周辺の店は、観光客や帰省客らでにぎわいを見せている。

愛媛の都市伝説である「蛇口からみかんジュース」を体験できる店「愛媛の食卓1970」が2024年4月にオープンし、観光客に人気だ。

埼玉県から訪れた観光客は「酸っぱい!」「おいしい」「ビタミンCが取れる感じがする」「これが例の(蛇口)って感じです」と新鮮な体験に目を輝かせていたほか、「いっぱい(蛇口を)ひねりたくなっちゃいますね」「道後温泉でさっきまで汗流していて、ふらっと歩いていたら、ビタミン摂取できそうだなって」と思わぬ発見に喜ぶ観光客もいた。

「愛媛の食卓1970」の内川文愛さんは、来客数の増加について「全館営業再開前は多い時で200組から300組だったんですが、今は300組が平均になっていて、土日はそれ以上のお客様が来てくださっています」と話す。

2024年4月に大幅リニューアルした創業78年の土産物店「絣屋本店」。全館営業が再開した7月は売り上げが2023年の2.6倍になったという。

絣屋本店の石田匡暁さんは「商店街全体でも、既存のお店も新たな商品、新たな打ち出し方がどんどんブラッシュアップされている」と話し、街全体の活気を感じさせる。

伝統と革新の融合“新たな道後の味”

本館の北側にある老舗の菓子店「山田屋まんじゅう」では、8月から湯上がりにピッタリな新メニューが登場した。

道後温泉店限定の「山田屋 酒アイス」だ。

この商品は、東京の日本酒を使ったアイスクリーム専門店「SAKEICE」とのコラボ商品で、北海道の日本酒「男山」をふんだんに使ったアイスに、157年受け継がれてきた山田屋特製のなめらかなこしあんを合わせている。

テレビ愛媛・鈴木瑠梨アナウンサーが試食してみると、「うん!日本酒です。ぶわーっと日本酒の豊かな香りが広がります。ただ、その奥底にはあずきの風味がしっかりとあって、あずきと日本酒の相性が抜群ですね」と、その味わいに感動した。

山田屋まんじゅうの高辻孝将取締役は、新商品開発の経緯について、「たくさんの方から、山田屋まんじゅうと日本酒が非常に合うというお言葉を頂いておりまして、甘すぎない甘さと日本酒がすっきりとした形で合うということで、最終的にこのアイスという形で実現させていただきました」と語った。

歴史を守りつつ、日々進化を続ける観光地・道後。南海トラフ地震臨時情報という試練に直面しながらも、その魅力は多くの人を引きつけている。

(テレビ愛媛)

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