高知・安芸市赤野地区で受け継がれてきた伝統芸能「赤野獅子舞」。一度は消えかけた火が2023年、若者の情熱で復活した。2024年は15人の子どもたちが加わり、7月の祭り本番に向けた練習が行われた。

夏祭りに向け練習に励む子どもたち

安芸市赤野地区で600年の歴史を誇る「赤野獅子舞」は、太鼓のリズムに合わせて繰り広げられる独特の舞だ。毎年7月の夏祭りと10月の秋祭りで奉納していて、県の保護無形民俗文化財に指定されている。

赤野小学校の体育館で週2回、地元の小学生を中心に園児から大人まで28人が、7月22日・23日に行われる夏祭りに向けて練習に励んでいた。

獅子(左奥)と獅子をからかう「テガイコ」の役の子どもたち
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「赤野獅子舞」に登場するのは、眠る獅子(しし)と獅子をからかう子「テガイコ」。寝ていた獅子が起こされて暴れだし、テガイコとの格闘が始まる。酔っ払いを演じたり、どじょうすくいをしながら獅子をからかうテガイコのユーモラスな表情や動きで笑いを誘う。

真剣な表情で太鼓をたたくのは、赤野小学校6年の有光健くん。

他の人の動きに合わせて太鼓をたたく有光健くん

赤野小6年・有光健くん:
最初の方は、みんな動き間違えてないかなとか見ながらたたきゆうけど、最後の方は疲れて、ああ疲れたと思いながらたたいてます。

有光くんは2023年11月から練習を重ねてきた。「ここにもきのうマメができた。ここにも」と手のひらを見せて言った。

赤野小6年・有光健くん:
最後までやったら、本番とか見てくれる時も、観客が大きな拍手をしてくれたりするので、うれしいから最後までやりきりたいです。

担い手不足のため、2023年からは地域の外からも参加者を募集している。
テガイコの小松世奈くんは、同じ安芸市でも土居地区からの参加で、「リズムに乗るみたいなところが好き」と話す。

土居小3年・小松世奈くん:
(リズムに乗ると)楽しくなる。他のうまい人見て、それを見習っています。

そんな子どもたちの思いを聞いて、赤野獅子舞保存会代表の有光新五さんは、「子どもの熱意がすごい。やる気が全然違うので、大人が負けてしまう」と話した。

人口減少、コロナの逆境を乗り越えて

かつては赤野地区の6つの集落が持ち回りで奉納してきた赤野獅子舞だが、人口減少により継続が困難に。

2015年に「赤野獅子舞保存会」を立ち上げ地区全体で続けてきたが、新型コロナが追い打ちをかけ、4年間にわたり活動休止を余儀なくされた。

赤野獅子舞保存会代表・有光新五さん:
赤野で獅子舞がなくなって、誰かが寂しい気持ちになるやったらどうにかしようと思って若い子に声かけましたね。数名がやるって声をかけてきて、去年なんとか開催できた。

逆境が赤野の青年たちの心に火をつけた。
若い参加者らは、インスタグラムやフェイスブックで発信するなど、新しい取り組みを始めたという。

「コロナで中止になって、すごいプラスになった面は結構ある」と有光さんは語る。

「見た人も楽しい気持ちになれたら」

若手が復活させた2023年の舞を見て、2024年は新たに15人の子どもたちが加わることになった。

初めて祭りに参加する赤野小3年生・岡崎たきのさん(右)

赤野小3年生・岡崎たきのさんは、初めて祭りに参加する。実は、獅子舞の女性の参加は約70年ぶりだ。岡崎さんは「(踊ってて)楽しいです。暑いだけ」とコメント。

同じく赤野小3年の吉田音葉さんは、「みんなの(舞)を見よったらやりたくなった。こんなに楽しいがやと思った」と言う。

半年以上練習してきた獅子舞を披露する日が近づいてきた。
有光さんは「みんな楽しくやってもろうて、見た人も楽しい気持ちになれたらそれでいい」と語る。

赤野小6年・吉田奏斗くん:
赤野の伝統を守りたいから、もっとうまくなって夏神祭みんなに見せたいと思う。

そして迎えた本番当日、一心不乱に獅子舞を披露した子どもたち。山間の集落は多くの見物客でにぎわった。

「観客のみんなが支えてくれる」600年続く「赤野獅子舞」を子どもたちが披露 太鼓のリズムで一心不乱に【高知発】

(高知さんさんテレビ)

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