“歩く肺炎”とも言われる感染症が、8年ぶりに大流行、特に大阪で感染が急増しています。

一体どんな症状が出るのか、なぜ今、流行しているのか取材しました。


■「せきが激しくて眠れない…」 患者数は去年の40倍に

大阪府箕面市にあるクリニックには、体調不良を訴える多くの子どもたちが診察に訪れていました。

【医師】「せきが全然治まらない」
【祖母】「そうなんです。夜になると、せきがひどくて微熱が…」

8歳の女の子は1週間以上、激しいせきが続いていました。

【8歳の女の子】「眠れない…夜は眠れなくて」

診断の結果、ある感染症にかかった疑いが。

【医師】「(せきが)激しくて眠れないとなると、『マイコプラズマ』を考えておく必要がある」

マイコプラズマという細菌に感染して発症し、長引くせき、発熱などの症状があるこの肺炎。せきやくしゃみなどの飛沫や、患者と接触することで感染することが多く、小・中学生がかかりやすいとされています。

【玉谷キッズクリニック 菅原祐一院長】「(患者が)かなり増えているという印象がありまして、特に増えたのは、この1カ月ぐらい。家族が感染すると、他の家族にうつって、全員がせきをしている場合もある」

こちらの家族も父親がマイコプラズマ肺炎の疑いがあると診断された後、子ども2人にせきの症状がでました。

【母親】「(子どもの症状が出たのは)主人が症状を出してから2週間弱くらい。完全な隔離も、部屋があればいけますけど、うちはそうもいかないので」

マイコプラズマ肺炎は8年ぶりに全国的に流行し、27日発表された国立感染症研究所の速報値では、最近の患者数が去年のおよそ40倍に。

大阪でも7月から8月にかけ急増し、1医療機関あたりの患者が全国最多になった週も。年間でも過去最多を更新するペースとなっています。

【大阪府 吉村洋文知事】「子どもがかかりやすいので、これから学校が始まりますから、学校で広がる可能性もあると思います。夏休みが終わって」

多くの学校で2学期が始まった今、懸念されているのが集団感染です。

マイコプラズマ肺炎は潜伏期間が2週間から3週間と長いのが特徴で、せきや熱があまりひどくない時期からでも感染力があり、「歩く肺炎」とも呼ばれているのです。

【玉谷キッズクリニック 菅原祐一院長】「歩く肺炎と異名を持つように、ある程度、元気さがあって仕事も行けたり学校も行けてしまったり、でもせきが激しいというところから広まってしまって、社会的な影響は大きいと思います」

■重症化すると脳炎や心筋炎などの合併症を引き起こす可能性も

中には、重症化するケースも。

飲食店を営む草野さんは、ことし3月初旬から2週間ほど乾いたせきが続いていました。

【マイコプラズマ肺炎に感染 草野徳大さん(51)】「風邪か何かと思ってほったらかにしていたんですけど、せきがひどくなって、ひどいときは1分近くせきが治まらない。高熱が39度くらいまで上がり、これは普通の風邪ではなさそうだなと」

あわてて病院を受診すると、重度のマイコプラズマ肺炎と診断され、およそ1週間、入院することになりました。

【マイコプラズマ肺炎に感染 草野徳大さん(51)】「(医師から)『肺炎の症状がまだ初期段階でよかったね』と。『これあと何日か放置してたら怪しいかもよ』と言われました。のどがイガイガするせきと、違うようなせきが出た時は病院で受診したほうが良いと思いますね」

まれに重症化し、脳炎や、心筋炎などの合併症を引き起こすリスクもあるのです。

■大流行の要因は行動制限の解除、人との接触増加、免疫がない人の増加

一体なぜ、ここまで大流行しているのか。専門家は…。

【杏林大学 皿谷健教授】「コロナ禍でみんながマスクをしたり、手洗いをよくしていたというのが行動制限の解除とかがあって、人と人との接触が増えることで急速に増えた可能性がある」

また、コロナ禍で免疫を持たない人が増えたことも要因と指摘します。

【杏林大学・皿谷健教授】「マイコプラズマ肺炎の感染がない人たちが増えたということが、全体的な集団免疫を下げることにつながり、よりひろがりやすく広がりやすくなった」


■さらなる感染拡大の恐れも…咳が3日続いたら受診して!

マイコプラズマ肺炎の感染拡大は、今後も続いていくのでしょうか。

杏林大学の皿谷教授によると「お盆明け、新学期で増加し、さらなる感染拡大も予想される。基本的に(マイコプラズマは)秋と冬に感染が増加するが、今後は秋冬以降の流行の恐れもある」ということです。

感染を防ぐためにどうすれば良いでしょうか。

そもそもマイコプラズマ肺炎とは、
・細菌の一種による感染症で、飛沫や接触で感染します。
・潜伏期間が2~3週間と長い。
・症状が軽く、出歩くことで人にうつすことから、“歩く肺炎”とも呼ばれています。

取るべき対策としては、「手洗い・アルコール消毒」「マスク」「適度な換気」という、基本的なものが大切です。

杏林大学の皿谷教授は「乾いた咳が3日程度続いたら、医療機関の受診をした方が良い」と話します。


■咳止め薬が足りない!

他に注意することとして関西テレビの加藤報道デスクはこのように話します。

【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「マイコプラズマ肺炎は、基本的には抗生剤を処方されて治すと言われていますが、今、その抗生剤が効かない『耐性菌』も増えているのだそうです。そうすると今度は、対処療法として咳止め薬が必要になるのですが、薬の供給不足がずっと続いています。背景にあるのが、コロナとインフルエンザ。同時流行もありますし、とにかく、年間を通じて咳止め薬が不足する状況が続いています」

夏場で体も疲れていますので、皆さんご自愛ください。

(関西テレビ「newsランナー」2024年8月28日放送)

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