新生児の血液検査で難病を発見して早期の治療ができることをご存じだろうか。広島では、2023年に検査で先天的な免疫の病気が見つかり、入院治療で元気になった1歳10カ月の男の子が退院した。治療を行った広島大学病院は検査を奨励している。

「5万人に1人」の難病

広島大学病院で1人の男の子が記者会見に臨んだ。8月3日に退院した1歳10カ月の叶羽(とわ)くんだ。

叶羽くん(1歳10か月)
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叶羽くんは、生後まもなく受けた「拡大新生児マススクリーニング検査」で5万人に1人と言われる「重症複合免疫不全症」が見つかったが、早期に治療できたことで命が助かった。

重症複合免疫不全症患者のCT画像

「重症複合免疫不全症」は、生まれつき免疫細胞がうまく働かないため、様々な感染症にかかりやすく、感染症にかかった場合の生存率は約40パーセント。そのため、1歳未満で亡くなるケースも少なくない。

一方で叶羽くんのように早期発見し、治療すれば障害の発生を未然に防ぐことができるという。

広島大学病院小児科・岡田賢教授:
新しく始まった「新生児スクリーニング」事業により診断に至り、大きな感染症を抱えないままに造血細胞を移植をして救命することができた

血液から先天性の疾患を調べ早期治療につなげる

「拡大新生児マススクリーニング検査」とは、どのような検査なのだろうか。生後、新生児は生まれた病院で、「先天性異常」を調べるため血液採取が行われ、20の疾患がないかを調べる。

2022年からは検査内容を拡大し、「重症複合免疫不全症」などさらに3つの難病を調べられるようになった。広島市では2024年3月から、国と県、市の助成を合わせることで、検査が無料になったが、検査率は92%で、受けていない赤ちゃんがまだいる状態だ。

病気に気が付かないまま、「ロタワクチン」などの予防接種を受けると、赤ちゃんが危険な状態に陥る恐れもあるという。

広島大学は会見で叶羽くんの造血細胞移植手術の成功を発表するとともに、早期発見、早期治療の必要性を訴えた。

広島大学原爆放射線医科学研究所・浅野孝基 准教授:
診断が遅れれば命にかかわる病気である一方で、早期に見つければ治療法があり、根治することができるというところがポイント

早期発見で元気に退院出来た叶羽くん。両親は医療チームへの感謝と共に「検査で判明する病気で命を落とす子供がいなくなりますように」とメッセージを寄せた。

(テレビ新広島)

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