保護者が目を離したわずかな時間に、子供が窓やベランダから転落する事故が後を絶たない。過ごしやすい気温となり、窓を開ける機会が多くなる5月は特に多発する期間として知られ、警戒が必要だ。小さい子供は危険を認識できず、予想のつかない行動を取る恐れがある。子供1人で窓付近やベランダで遊ばせないことに加え、自力で窓を開けられないようにする補助錠の設置などハード面の対策も求められる。
広島市中区の53階建てタワーマンションで4月16日、中層階に住む女児(3)がベランダから転落して死亡した。広島県警によると、女児は台所の勝手口からベランダに1人で出て、室内から自力で持ち出した踏み台を使い、高さ135センチの柵を乗り越えた可能性があるという。
春はこうした転落事故が多発する傾向にある。東京消防庁によると、令和元年~5年の5年間で5歳以下の子供65人が住宅の窓やベランダから転落し、救急搬送された。月別でみると5月が19人と最も多かった。
子供の転落事故は、保護者が目を離したわずかな隙に起こることも。消費者庁によると、保護者が郵便物を取りに外に出て戻るわずか約1分間で、3歳の子供が植木鉢などを踏み台に集合住宅3階のベランダの柵を乗り越えて転落した事故も発生している。
子供の事故防止に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan(セーフキッズジャパン)」の北村光司理事(43)は「家具や大型の電化製品など、家庭にあるものすべてが子供にとっては遊具同然と思って注意してほしい」と話す。
子供は大人が思う以上に活発に動き回る。セーフキッズジャパンが3、4歳児を対象に高さ130センチの柵を乗り越えられるかどうか検証した実験では、3歳児の20%、4歳児になると50%が乗り越えることができた。
北村さんは「親が子供から片時も目を離さないでいるのは難しい」とした上で、具体的な対策として、窓やベランダの出入口に補助錠を付ける▽窓近くにソファやベッドは置かない▽ベランダに植木鉢や三輪車など、足場になるような物を置かない▽ベランダ柵の間にアクリル板を張りガードする―などを挙げる。
また、「マンションの管理会社が補助錠を付けた窓を増やす取り組みを進めるべきだ」とも指摘した。
NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は「高層マンションで育った子供は高いところが怖いという感覚を抱きにくい場合がある。常時子供を見ておくのは難しいが、窓やベランダに近づくことが危険だということを繰り返し教えていくことが大切だ」とした。(鈴木源也)
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