群馬県立自然史博物館(同県富岡市)で常設展示中のクジラの化石標本が詳細な調査の結果、700万~800万年前に生息し絶滅したインカクジラの新種だったことが判明した。同館が24日発表し学術論文にも掲載した。体長は推定10・47メートルで、小魚も捕食する若い個体とみており、「当時の多様なナガスクジラ類の動物相の一端が明らかになった」としている。
化石は1987年、ペルーのナスカ台地の南方80キロのサカコ盆地で、尾の先端部分以外すべてそろった「ほぼ完璧な状態」で見つかった。その後、群馬県が購入し、平成8年に開設された同館で常設展示されていた。
同じ盆地で見つかり、神奈川と愛知の博物館にあるクジラの化石が28年に新種と判明、同じインカクジラ属とされたことも追い風になった。今回、自然史博物館で判明した標本は先行の2個体と下アゴの関節部分の骨の形が一致していたため同属とされたが、鼻骨の位置などが違っていた。
陸の哺乳類が海に入り進化したクジラは、古いものほど鼻(鼻骨)が前方にあり、肺呼吸の際に潮を吹くうえで便利な頭頂部へと動いてきた。同館の標本は現代のクジラより前方にあり原始的な形態という。またクジラヒゲ(ヒゲ板)の特徴や骨格から、機敏な遊泳能力を持ち小魚なども捕食していたとしている。
同館の木村敏之学芸員は「海で流されたり、地震などでバラバラになるケースがほとんどで、今回のように完璧に近いな状態で見つかるのは奇跡に近い」と話す。
開館以来、展示されてきた化石標本は「ナガスクジラの仲間」と紹介されているが、近く正式な新種「インカクジラ フォーダイセイ」の学名で展示されることになる。
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