アルコール摂取後に体内で生成されるアセトアルデヒドがDNAを傷つけていることをヒトの細胞で明らかにしたと、東京都医学総合研究所のチームが発表した。生物にはDNAの傷を修復する機能が備わっているが、損傷が大きいと、がんや老化現象を引き起こすことが知られている。アルコールが体に及ぼす悪影響の一因の可能性がある。
アセトアルデヒドはアルコールが体内で分解される過程でできる有害物質で、頭痛や胸やけなどの二日酔いの原因だ。
チームは、DNAの傷を修復する遺伝子の働きをなくしたヒトの免疫細胞と、正常な免疫細胞にそれぞれアセトアルデヒドを加えた。すると、遺伝子の働きをなくした細胞は、正常な細胞よりも約3倍死にやすかった。
アセトアルデヒドにさらした細胞では、がん細胞に頻繁に見られる異常な染色体構造ができていることもわかった。
DNAの損傷と修復が何度も繰り返されると老化が早まるという先行研究がある。チームは、アルコールによるDNA損傷が、加齢性の疾患を引き起こすリスクにつながっている可能性を指摘する。
チームの笹沼博之・都医学研プロジェクトリーダーは「アセトアルデヒドは、がんだけでなく、老化にも関係している可能性は否定できない。飲酒によってDNAがどんな損傷を起こすのかが明らかにできた。過剰飲酒に伴う病気の予防を考える材料になる」と話した。
成果は3月12日付の英科学誌「セル サイクル」に掲載された。【渡辺諒】
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