群馬大医学部付属病院の徳江豊・感染制御部長=前橋市内で2024年9月25日午前10時38分、田所柳子撮影

 通称「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症が、かつてないペースで広がっている。群馬県内の患者は1日時点で29人に上り、過去最多だった22年の13人の倍以上になった。少なくとも3人が死亡しており、群馬大医学部付属病院(前橋市)の徳江豊・感染制御部長は「明らかに増えている」と注意を呼びかける。【田所柳子】

手足に痛み、腫れ 早期治療を

 厚生労働省によると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、いわゆる「溶連菌」がまれに引き起こす重篤な症状。最初は、腕や足の痛みや腫れ、発熱、血圧の低下などから始まることが多く、その後、組織が壊死(えし)したり、呼吸状態の悪化や多臓器不全を起こしたりする。場合によっては数時間で、急速に全身状態が悪化。死亡率は約30%とされる。

 徳江氏は「半日や1日で急激に悪くなり、時間単位で皮膚の赤みが増える場合もあり、毒性はかなり強い。多くは重症化する前に治るが、一部の人は全身の血液に菌が回ってしまう」と解説する。

 感染症法による届け出を始めた1999年当初はほとんど報告がなかったが、今年の患者数は過去最多を更新。新型コロナウイルスの流行下では3密対策などが奏功して激減していたが、対策が通常に戻ってからは以前よりも増加した。徳江氏は「コロナ禍で免疫のない人が増え、以前と同程度(の菌の量)でも人間の側が感染しやすくなって、広がっている可能性がある」と指摘する。

 保健所別では前橋が半数の14人で、高崎・桐生4人▽伊勢崎・太田・利根沼田2人▽藤岡1人。年齢は70代以上が16人と多く、60代4人▽50代1人▽40代4人▽30代2人▽20代2人。若い世代にも一定の数がいる。男性が17人、女性が12人だった。

 「劇症型」まで悪化するのはごく一部だが、より軽い症状の「予備軍」の患者はより多くいるとみられる。徳江氏は「咽頭(いんとう)炎や貧血などの症状がありつつ劇症型にいたらない患者は何倍もいて、裾野が広がっている」という。

 対策は、予防と早期発見がカギとなる。せきやくしゃみなど飛沫(ひまつ)からだけでなく、傷口から感染する場合もある。中には自覚がないほど小さな傷が原因で悪化する人もいるという。手洗いや消毒、せきエチケット、傷口を清潔に保つなど、基本的な感染防止対策が有効だ。

 手足の痛みや腫れなどの症状があった場合、早く治療を始めるのも重要。徳江氏は「重篤になった場合でも早期の集中治療が救命につながる」と訴える。

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