福岡・八女市の障害者支援施設「蓮の実園」に続々と集まってくる犬たち。小型犬から大型犬までさまざまな種類がいる。
心身が癒やされるドッグセラピー
犬と触れ合い、心身を癒やすドッグセラピー。ボランティア団体「フレンドリー」が20年ほど前から続けている。この日は知的障害などがある施設の利用者、約20人が参加した。
この記事の画像(10枚)「かわいい」「気持ちがいい」「ふわふわしてる」などと利用者から楽しそうな笑顔がこぼれる。なかには「40年ぶり…、小中学校時代以来。家にコリー犬がおった」と懐かしむ年配の男性もいた。
約1時間にわたって賑やかに行われたセラピー。蓮の実園の星隈浩昭さんは「普段、動かれない利用者さんがワンちゃんを触ろうとして、頑張って身体を動かしたり、余り言葉を発しない利用者さんが『かわいい』と言ったり、そういう発見がありました」と話す。
手で触れて目で見て感じて
フレンドリーはこれまで、高齢者施設や学校など、さまざまな場所でドッグセラピーを実施してきた。代表の末吉香織さんは「生き物なのでこの温かさや息づかいなど、手で触れて目で見て感じることで、人はきっと癒やされたり安心したりするのでは」と犬が人にもたらす力の大きさを感じている。
末吉さんは福岡県が推進する「ワンヘルス活動」にも参加。「人と動物が共生する社会」の実現へ、自身の経験を交え、思いを伝えている。「私も犬のことを知る、犬たちも人間のことを知る。人と動物の心や関係性も豊かな状況になることがワンヘルスかなと思っている」と思いを語る。
セラピーで活躍するのは犬だけではない。
医療法人がホースセラピー施設開設
久留米市の精神科病院。隣接する広場を見るとそこには数頭の馬!2024年5月、医療法人「コミュノテ風と虹」が開設したホースセラピー施設だ。
堀川公平理事長は「ホースセラピーはヨーロッパでは盛んに行われていて、馬にはいろんな力があり、それを最大限に生かして人が抱えるストレスとか生きづらさとかそういったものを少しでも柔らかくしてくれる」とホースセラピー開設の意義を語る。
この日、スタッフが馬を連れ、訪れたのは、病院が設けている「児童・思春期病棟」に入院中の子どもたちのもと。児童・思春期病棟には、学校に行けずに家に引きこもっていたり、虐待や複雑な家庭環境が原因で心に傷を負ったりした子どもたちなど約20人が入院している。病院ではこの子どもたちの心の治療にホースセラピーを取り入れ、馬と自由に過ごす時間を設けているのだ。参加した子どもたちは馬にブラッシングしたり、水をあげたりして、それぞれ思い思いに馬との時間を過ごしていた。
堀川理事長は「馬と触れ合ったことによって、人に会うことができずに引きこもりがちであった子が、馬を世話して馬と触れ合う中で、みんなの中に入ってくれるようになっていく」と話す。
馬とともに働き症状を改善
またこの施設では障害のある人への就労支援も行っている。働くことで症状の改善が期待できるというのだ。オープンからスタッフとして働く岡崎星周さん(19)。3月に特別支援学校を卒業し、現在は週5日、馬の手入れや餌やり、厩舎の掃除などをしている。仕事を始めてまだ4カ月余りだが、長時間、集中して働けるようになり、自信が持てるようになったと馬と多くの時間をともにするうちに自分のなかに変化が出てきたことを話す。
そばで見守ってきた母親のひとみさんは「うちの子はコミュニケーションが苦手で、余りしゃべることが少なかったが、家でも自分のこととか職場の人のことを話せるようになって学生のころとは大違い」と息子の変化を喜ぶ。
病院は、この施設が、人と動物が支え合いみんなが元気になれる”ワンヘルス”が目指す場所になればと考えている。堀川理事長は「人が健康であるということは、動物も健康である、あるいは環境がそういうものをきちっと整えなければいけない。こういうものがひとつになってこそ幸せがあるのではないか。そういう意味でワンヘルスっていうのは、非常に私は素晴らしい概念だと思います」とワンヘルスに期待を寄せる。
動物たちと共に過ごすことで生まれる「癒やし」。新たな医療の一つとしても注目が高まりそうだ。
(テレビ西日本)
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