先日、家内の十七回忌、母親七回忌の法要を営んだ。十七回忌まで生きているだろうかと不安もあった。が、無事終わった。またひとつ責任を果たせたような満足感に今浸っている。
住職の読経を聞きながら二人の遺影を眺め、思い出していたことがある。
晩年の母親をよく実家に訪ねた。母の語る家族の昔話にわが息子が出てきた。母は園児だった息子に「お父さんとお母さんと、どっちが好き?」と尋ねたという。すると幼い孫は「おばあちゃん、そんなこと分からないよ。お父さんは一生懸命会社で働いている。お母さんは毎日おいしいご飯作ってくれる」と返答したそうな。
それを聞いた母は恥ずかしいことを聞いてしまった、お母さんは本当に上手に子育てしている、といたく感心した。そんな話だった。
この話を2人の息子にしたら、長男は「それは俺が言ったんだよ」、次男は「そんなこと言えるのは俺だよ、俺しか言えないよ」と言い合っていた。会社人間だった私。知らないところで家内は愛情いっぱいに息子たちを育ててくれたのだと再々認識、再々感謝。
今たくましく頼りがいのある大人に成長した息子を眺め、がん患者の私はこれでいつでも退場できるなあと思い巡らせるなか、法要が終わった。
山本家弘(84) 東京都調布市
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