1人暮らしの高齢者も多い戸山ハイツ=12日午後、東京都新宿区(山本玲撮影)

国立社会保障・人口問題研究所が12日に公表した将来推計。令和32(2050)年には高齢化が深刻化し、65歳以上の1人暮らしは珍しくなくなる。地域社会の共同生活が難しくなる「限界集落」はすでに各地で問題となっており、コミュニティーの崩壊に歯止めをかける対策は待ったなしの課題だ。

隣人が孤独死「普通の状態に」

約3000世帯が入居する東京都新宿区の都営集合住宅「戸山ハイツ」。地下鉄の駅から徒歩10分ほどの好立地だが、高齢化率が5割を超える「限界集落」の団地で、集合住宅の部屋に1人で暮らす高齢者も多い。12日午後に取材に訪ねると、買い物や病院に出かける高齢者の姿が目についた。

「近頃見ないなあと思っていたら、亡くなっていた。死後3日くらいして親戚が見つけたと聞いた。そういう状態が普通になっている」

住民の男性(84)は4年前に1人暮らしの隣人が亡くなったときの状況をこう語り、危機感をにじませた。若い住民の少なさに不安を感じているという。ハイツは空室が1割近くに上るため、「新しい住民を入れればいいのに」と話した。

居場所づくりや社会参加を

現状に対する焦燥感からか、住民たちの結びつきは強い。50年以上住んでいる女性(76)は夫と2人暮らし。「配偶者が亡くなって1人で暮らす高齢者も多い。お茶会などで交流し、できるだけ声をかけるようにしている」。単身の住民が孤独を感じないように気を配っているという。

「1人で暮らしているが、近くに子供がいて時々見に来てくれるので不安はない」と話す住民の女性(82)もいた。

戸山ハイツのように地域の高齢化は全国的な問題だ。国立社会保障・人口問題研究所の藤井多希子・第2室長は「平成27年ごろから社会的孤立や孤独がテーマとなり、地域での居場所づくりや社会参加が大きな課題となっている」と話す。

老老介護「自分が面倒を見たい」

今回の推計では、未婚の割合が高い50歳前後の団塊ジュニア世代がクローズアップされた。「この人たちが高齢化して単独世帯化すれば、身寄りがなく、支援も受けづらい高齢者の増加につながる」(藤井氏)

高齢者が高齢者の世話をする「老老介護」など高齢の親子だけの生活も、これまで以上に懸念される課題となる。

戸山ハイツ近くのスーパーに向かうと、店舗前の広場で友人と談笑する住民男性(61)がいた。鬱病を患っているといい、同居する80代の母と年金などで生計を立てているそうだ。「母は(男性に)迷惑をかけたくないと言う。でも、自分がやるしかないし、面倒を見たいと思っている」と力強く語った。(山本玲、王美慧)

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