伊東四朗さん


2008年10月22日付の産経新聞に掲載した連載「話の肖像画」のアーカイブ記事です。肩書、年齢、名称などは掲載当時のまま。

――テレビのレギュラー番組などで忙しい中、舞台は毎年、続けていますね

伊東 仕事の出発点が舞台だ、というのが一番の理由ですかね。舞台というのは必ず新しい発見があるんですよ。

――発見は、次の舞台「学(まなぶ)おじさん」(24日から東京・下北沢の本多劇場)でも?

伊東 大爆笑をしてもらう芝居ではないし、今回の役は、どうもうまくつかめないんです。今までやってきた中で一番難しい役ですね。共演者も初めての人がほとんど。いつも一緒にやっている三宅裕司さんや佐藤B作さんだと、お互いにわかっているから安心感があるんですけどね。これでいいのか悪いのか? きっとそれは、初日が開いたとき、お客さまが教えてくれるのだと思います。

――お客さまに教わる?

伊東 すべてそうですよ。けいこ場で全部、決めてしまっても結局、いい意味で大概裏切られます。だから、ニュートラルなところを残したまま、お客さまに見て判断してもらったほうがいいんです。

《「学おじさん」は、水谷龍二氏に作・演出を依頼。演じるのはスナック経営者で風水師。弟子3人とともに、とある家に上がり込み…。平田満さん、片桐はいりさんらが共演する》

――風水師役だそうで(笑)

伊東 水谷さんには、「座長ではない芝居を書いてください」とだけ注文したんですが…。私の風貎と風水師を合体させると変なのか、役柄を言うだけでみな笑うんだよね。設定だけで、すでにプレッシャーですよ。

でも中身は、かなり深刻。いかさまじゃなくて世の中を憂う風水師だし、夫婦や親子の問題も含まれている。お客さまの、それぞれの生活によって感じ方も変わるでしょう。喜劇なのか何なのか? 今まで経験していないタイプの芝居です。

――でもお客さまは、笑いを期待してくると思うのですが

伊東 そこなんですよね。前作の舞台も、私はそんなおかしいと思ってやっていないのに、客席は、ばんばん笑う。「笑いたい」と思ってきているから、ちょっとしたことでも笑ってくれるのでしょうかね? 今回もそれは楽しみでもありますが、すごく怖い。どこでお客さんが笑うのか、笑わないのか? ミステリーです。

(田窪桜子)

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