秋田の食卓には欠かせない漬物“がっこ”を通して地域に交流の場をつくろうと奮闘している人が秋田・五城目町にいる。「高齢者に寄り添える店を開きたい」と、介護事業所の相談員を退職して定食屋を開いた女性を紹介する。
笑って過ごせる場所をつくりたい
2024年5月に五城目町の中心部にオープンした「GaccoChacco処、道」。
この記事の画像(18枚)店を切り盛りしているのは、佐藤香織さん(50)。五城目町で生まれ育った佐藤さんは、通所介護事業所の職員として27年間、利用者の相談を受けてきた。高齢者に寄り添い、相談話に耳を傾ける中で、ある思いが芽生えたという。
GaccoChacco処、道・佐藤香織さん:
外に出ていろんな人と話して、声を「わはは」と上げて笑う人は認知症の発症率が低いと聞いたことがあるので、いっぱい笑うことによって心の活性化が図られる。元気で長生きしてほしい。それに尽きる。
外に出て会話をする機会が少なくなった高齢者のために笑って話や食事ができる場所をつくりたい。そう決心した佐藤さんはクラウドファンディングで資金を募り、店の開業にこぎ着けた。
GaccoChacco処、道・佐藤香織さん:
「助けて」と言えば必ず誰かが助けてくれる町。ここを作る時も絶対に1人ではできないことだった。みんなで手作りでできたような店になったと思う。
定食には母の“手作りがっこ”
店の人気メニュー「今日の定食」は、佐藤さんオリジナルの「香織ドレッシング」がかかった肉料理など、毎日違ったメニューに手作りの漬物“がっこ”が添えられる。
コメは、義理の父の田んぼで収穫したあきたこまちを使っている。「大根の酢漬け」は、ほどよい塩味で素材の甘さが引き立っている。酢漬けなのでさっぱりとしていて、ご飯が進む味だ。
定食に必ず付く“がっこ”は、佐藤さんの母・本間ミネ子さん(73)が作っている。
本間さんは、500年以上続く町の朝市でもがっこを販売しているが、2024年6月の食品衛生法の改正で、“がっこ”の製造・販売には、衛生基準を満たす保健所の許可を受けた施設が必要になった。そこで佐藤さんは、母の“がっこ”を守るため、店の隣に新たに漬物工房を建てた。
佐藤さんの母・本間ミネ子さん:
ここに来れば娘がいる。一つ屋根の下で仕事ができるって楽しい。何かあれば話して、お客さんが帰った後も「今日のお客さんこうだった、ああだった」「この漬物がおいしかった」と言ってくれるのでうれしい。楽しい。
“月1”でイベントも開催 毎回訪れる人も
母や介護相談で交流をもった高齢者“町の先輩たち”がつくった道を次の世代につなげたい。そんな思いから、月に1回ほど企画する料理作りなどの参加型イベントには、子どもから大人まで幅広い世代が集まる。
近所の常連客は「店の明かりがぽっとついていれば、ほっとする。町の明かり。お年寄りだけでなく、若い人との交流の場でもある」と話す。“がっこ”をつまみながらの会話を楽しみに、毎回訪れる人も多いという。
今後目指したいことについて佐藤さんは、「赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年代の人に来てもらって、一人一人のお客さんにおいしい漬物を味わってもらうというところは変えずに、少しずつ高齢者の病気のことを理解してもらえるような会をやっていきたい」と語った。
佐藤さんはこれからも食事と会話の場をつくり、受け継がれてきた“道”をつなぎ、未来へと伸ばしていく。
(秋田テレビ)
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