村上隆≪洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip≫2023-2024 ⓒ2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.All Rights Reserved.

現代美術作家、村上隆さんの個展「村上隆 もののけ 京都」が京都市京セラ美術館で開かれている。国内では8年ぶりの大規模展で、約170点の9割は新作。日本美術の聖地、京都に真正面から向き合い、江戸期の絵師たちの作品を色彩豊かに再構築した。「日本の公の美術館では最後の展示になるだろう」と話す。

村上さんは、日本の伝統的絵画と現代のアニメやマンガに共通して見られる平面的な表現を「スーパーフラット」と呼んで提唱。欧米での活躍で現代美術界に旋風を巻き起こした。

今回の展示はテーマごとに6室で構成されるほか、日本庭園の池にルイ・ヴィトンとコラボした約13メートルの彫刻「お花の親子」を展示した。ヴィトンのトランクの上に立つモニュメントは、現代の大仏のようにも見える。コロナ禍の令和2年、東京で初公開され、今回は東山を借景に光り輝く威容を現した。

記者会見でおどけたポーズを取る村上隆さん ≪お花の親子≫ 2020ⓒ2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.All Rights Reserved.

中央ホールで来場者を待ち構える高さ約4・3メートルの巨大な「阿像」と「吽(うん)像」の間をすり抜けると、華やかな金雲に包まれた京の町の俯瞰(ふかん)図が壁いっぱいに広がった。岩佐又兵衛による国宝「洛中洛外図屛風(舟木本)」を再構築した縦2・3メートル、横13メートルの大作だ。

大佛殿に参拝する人、歌舞伎踊りに興じる人など一様に楽しそうだが、よく見ると金雲にはドクロが浮き上がる。戦乱や天災、疫病にたびたび見舞われ、〝もののけ〟と共生する京の町がそこに描かれている。

次の部屋にももののけが潜む。平安京の時代から京の都を守護してきた青龍、白虎、朱雀、玄武の「平安四神」が暗闇の中でポップに極彩色に光り輝く一方、床や壁にはドクロ文様が。穢(けが)れと祓(はら)いが共存する京の町を表現しているようだ。

俵屋宗達や尾形光琳ら琳派の絵師たちが描いた「風神雷神図」は、勇ましくマッチョな風貌だが、村上さんの手にかかるとゆるキャラのようなかわいらしさで見るものを和ませる。

村上隆 ≪風神図 雷神図≫ 2023-2024 ⓒ2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.All Rights Reserved.

展示を企画した京都市京セラ美術館ゼネラルマネジャーの高橋信也さんは「コロナや戦争など現代にももののけがいる。それらに対峙(たいじ)して気持ちを変える意味でアートが大きな役目を果たす」と話す。

文化芸術支援のあり方にも一石を投じた。京都市のふるさと納税の仕組みを利用して寄付を募ったところ、4月5日までに5億円余りが集まった。同館企画推進グループの山﨑裕介さんによると、限定トレーディングカードを返礼品に加えるなどの工夫が功を奏したが、「村上さんの爆発力に驚いた。地方の美術館が財源を確保して継続させる取り組みとして共感を呼ぶ活動になるはず」と話す。

村上さんも2月の記者会見で「全国で文化事業をしているみなさんもこの制度を有効に使ってほしい」と呼びかけていた。

展示は9月1日まで。寄付によって、京都市に在住・通学の高校、大学、専門学校生は入場無料。中学生以下は誰でも無料。(田中幸美)

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