合材で路面の穴をふさぐ作業員。札幌市内の全域でこうした補修が行われている=札幌市白石区の市道(坂本隆浩撮影)

温暖化の影響で例年より早い春を迎えた札幌市。この時期は損傷した道路の補修工事が盛んに行われているが、今年はいつもより被害がひどく、補修工事が追い付いていない。市の委託を受けた道路維持管理業者も作業開始時期を1カ月ほど早め、2月上旬から進めているが、新たに発生するひび割れなどもあり、ドライバーや歩行者を悩ませている。

補修作業1カ月前倒し

「北海道の道路は穴が開きやすい」という記事を本紙電子版「産経ニュース」に書いたのは令和3年6月。札幌の市道や道道などで路面損傷が多発し、その原因が雪の融解と凍結の繰り返しによって起きる路面のひび割れ拡大にあると紹介した。

路面損傷のメカニズムはこうだ。

舗装道路の表面には経年劣化などによる微細なひび割れがあるが、春先の気温上昇で雪解けが進むと、ひび割れの溝に水が浸透する。春先の夜間は氷点下まで冷え込むため、ひび割れの隙間に入った水分が凍結。水は凍ると体積が膨張するため、ひび割れを少しずつ広げていく。

氷点下前後で気温が変化する春先はこの工程が繰り返されやすく、「ポットホール」と呼ばれる穴ができてしまう。幹線道路などは車の往来が激しく、走行の繰り返しによる衝撃で損傷はさらに広がりやすい環境にさらされている。

札幌市では今季、ポットホールの発生が極めて多い。市の道路管理担当者は「冷え込みの厳しい2月の気温が暖かく、最高気温が10度以上の日も3日間あった。雪解けが早かったことで車両往来による損傷を受けやすい状況もあった」などと分析する。

道路の補修作業は例年、3月中旬ごろから始まるが、今年は市の要請を受けた民間事業者が2月上旬からスタートしている。一時的に業者を増やして対応しているが「補修作業が追い付いていない」状況が続いている。

道路補修予算を倍増

路面状況が悪いと、車のタイヤのパンクなどトラブルも招く。市道路管理課がまとめた「道路の穴ぼこに係る(車両の)賠償件数と金額」をみると、令和元年度から4年度の賠償件数は9~19件で推移しているが、直近の5年度は3月末時点で29件と急増している。最も多いのはパンクで、次いでホイール破損など。路面の損傷箇所の増加に合わせてこうした事例も増えているという。

市内10カ所の土木センターに寄せられた道路に関する苦情件数も5年度(2月末時点)は2406件で、過去3年と比べても1割ほど多い状況だ。

札幌市はこうした状況も踏まえ、6年度に道路補修工事を強化する。管理対象である市道と道道について、5年度の予算比で2倍に当たる約41億円を計上。これまで年間26キロ程度だった補修区間について、50キロ前後まで拡大させる。

市の担当者は「将来的に舗装の傷み方がさらに激しくなると予測しているが、今の補修ペースでは劣化の方が早く作業が追い付かないことが分かった」と強調。おおむね3層構造の舗装路面について、第1層部分を削り、舗装を引き直す工事を進める方針としている。

札幌市の道路補修 札幌市の道路管理維持は市内10エリアを23の共同事業体に委託して行われている。ポットホールが増える春先(2~5月)は発注事業者を別途追加して対応。令和2~3年の追加は20件前後だったが、4年35件、5年30件と増加傾向にある。ポットホールにかかる補修費用は年間8億~10億円。今年度は道路補修予算を大幅に拡大しており、ポットホールの発生を未然に防止する効果も狙う。


~記者の独り言~ 札幌市内では4月に入っても道路の損傷があちこちに残る。車体が大きく揺れるほどの穴もあり、中には半径50センチ以上、深さ10センチ以上のポットホールも見かけた。交差点内にも存在するため歩行者にとっても危険だ。札幌市が補修予算を倍増したことは評価したいが、道路を利用するドライバーの一人として道路を傷めないやさしい運転も心掛けたい。(坂本隆浩)

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