今回の「がん電話相談」は術後の病期診断変更により再発リスクが高まった50代の子宮体がん患者に、がん研有明病院元婦人科部長の瀧澤憲医師が助言します。

瀧澤憲医師

――昨年、MRI検査で子宮体がんのⅠA期と診断され、手術しました。子宮・卵巣を切除したものの、リンパ節郭清は行いませんでした。しかし術後診断では、大きさ5センチのⅠB期(筋層浸潤が2分の1以上)であることが分かりました。今後、どのような治療を受ければよいですか。

「術前にⅠB期と分かれば子宮・卵巣切除だけでなく、骨盤と傍大動脈のリンパ節郭清を行うのが標準です。このため、これからでも再び開腹手術を受け、リンパ節郭清を行うことが勧められます。しかし、術後に普通の生活に戻った患者さんの約半分は、再手術を選択していないのが実情です。その場合は、化学療法を行いつつ、PET―CTなどの画像検査を半年ごとに行い、慎重に経過を観察することが多いです」

――リンパ節転移はどれほどの頻度で起きますか。

「子宮体がんⅠB期の場合、がんの顔つき(発生母地の子宮内膜の細胞とがん細胞の類似性の度合いなど)により、多少の差はありますが、約20%で骨盤リンパ節転移が報告され、その約半分は傍大動脈リンパ節転移も陽性になると報告されています」

――欧米では再発予防のため放射線治療も行われていると聞きました。

「日本国内でも20年ほど前までは、骨盤リンパ節転移が陽性であれば、術後照射が行われることが多く、その場合の5年生存率は50%前後と、欧米と同水準でした。しかし国内では平成12年頃から骨盤に加えて傍大動脈のリンパ節郭清を行うことが標準となり、リンパ節転移が陽性なら、術後化学療法を行うというのが一般化し、5年生存率は75%以上に改善されました。しっかりと手術した後に術後照射をすれば、腸閉塞(へいそく)や下肢のリンパ浮腫などの後遺症も強くなるため、現在では術後照射は勧められなくなったのです」

――術後化学療法を反復した後に、リンパ節転移が見つかった場合はどうしたらよいでしょう。

「再手術をしない場合、術後約2年間、半年ごとにリンパ節転移が起きていないかを画像検査で観察します。運悪く転移が出現したら、早急に再開腹して転移陽性部位を中心に、周囲も含めてリンパ節郭清します。約半分の患者さんはこれで救済できます」

――化学療法で手指の末梢(まっしょう)神経障害が起き、日常生活に支障が出るのでしょうか。

「パクリタキセルは化学療法でよく使われますが、2サイクル以上で末梢神経障害が発現し、6サイクル施行すると50%以上の患者に1~2年ほど続く障害が残ります。このためギターやピアノの奏者だとパクリタキセルを、比較的副作用の少ないドセタキセルに変更します。これにより障害を相当軽減できます」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。5月6日は電話相談を休みます。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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