特集は長野市の「発明家」です。86歳の元大工の男性がこれまでに発明した品は実用性が高いものからクスっと笑えるユニークなものまでなんと100点以上。その数々と衰えぬ探究心を取材しました。
■不便さ解消!元大工の発明品
吉田勝さん:
「雨よ、降れ降れ~」
ヘルメットの上に傘を装着。その名も「傘ハット」。使い方は見た通りです。
吉田勝さん:
「(雨でも)両手が使えるの!これが一番。まあまあ、こんなバカなこと考えてます」
発明したのは長野市中御所の吉田勝さん86歳。
吉田さんは元大工。手先の器用さを生かし、身近にある「不便さ」を解消する数々の品を作り出してきました。
■トイレットペーパーホルダーに穴!
続いて紹介してくれたのはー
ドリルで穴を開け、ヤスリをかけて穴の部分を滑らかに。
トイレで使う発明品です。
吉田勝さん:
「(紙を)奥に引っ込めたり、送り出すことがあるんだけど、この切り取り線見えづらいでしょ?そのときに(紙切板に)合わせるためには、合わせて、こうやって切るということがあるんだけど、そんなことができるようにこの穴を『ずらし穴』を考えてみました」
トイレットペーパーホルダーの「紙切板」の中央に穴を開けた「穴付トイレ紙ホルダー」。板に隠れてしまうトイレットペーパーの「切れ目」を探しやすくするものです。
すぐにつまみ出せるのであの「三角折り」の手間も省けると吉田さんは言います。
吉田勝さん:
「クルクル~って送り出せるわけだ。ホテル、旅館、宿泊施設ね、『三角折り』をサービスでやっている。これで穴開けて解決だぜ(笑)」
実はこちら、「発明学会」が主催した2023年度の「身近なヒント発明展」で、「アイデア賞」となった作品。応募総数1500点余りの中から上位300点に選ばれました。
吉田勝さん:
「浮かんできたのをただやってるだけだから、力みが全然ないから。モノづくりが好きだってのもあって、それに向かって作ってたというところ」
■小さいころからモノづくりが好き
吉田さんは信州新町出身。幼いころからモノづくりが好きでした。
吉田勝さん:
「竹スキー作ったり、そりを木で作ったり、そういうこともして、割合考えるの好きだったんだな、その頃から」
中学を卒業して県長野技術専門校で学び、16歳で大工の道に。26歳のころ独立し、工務店を営んできました。
発明に励むようになったのは30年ほど前から。アイデアが浮かぶとノートに書きとめ、試行錯誤を繰り返しながら、そのほとんどを形にしてきました。
■「くつ下はき具」に「立ち座り補助具」
吉田勝さん:
「こうやって履くでしょ。履いたらこれを引っ張ればはまっちゃう」
スリッパを改良した「くつ下はき具」。
靴下をセットする手間はありますが、これなら、お年寄りも、簡単に履けるのではと考えました。
こちらは「立ち座り補助具」。
吉田勝さん:
「高齢者になるとこうやって(支えにして)立つと。座るときも。これはイスにもなるんだ」
■長野のエジソン!?
発明品はこの30年間でなんと100点以上。
「長野のエジソンですね」と話を向けるとー
吉田勝さん:
「エジソンじゃあ、そんな上じゃない。ドクター中松だっけ、そういう名前の人いたよね、『長野のドクター中松』って冷やかされて言われてるんだ。(続いているのは)探求心があるからじゃない?何かものを見ても、こうなればいいのに、ああなればいいのにという見方は自然に」
■避難所で使えるものも発明
こちらは東日本大震災の避難所の様子をテレビで見て思いついた発明品です。
吉田勝さん:
「避難する人、体育館の広いところで一人分これがあれば。自分のこういうの(ジャンパー)かけとけば、目隠しできちゃう。避難所では知らない人もいるし、人の視線も浴びるし、嫌だということから考えた」
避難所で雑魚寝をする住民たちのために考えた「安眠枠」。
吉田勝さん:
「あー、地震の災害が起きてここにたどり着いて『やっと安心して安めそうだ』ーってなってくれればいい」
ホームセンターで材料をかき集め、1カ月かけて200個を製作。ボランティアを通じて岩手県の被災地・大槌町に寄付しました。
吉田勝さん:
「1週間も経たないで社協から電話きて、『追加お願いできますか』と、『大好評だ』と。あー、それでもよかったなって、使ってくれてれば」
誰かの役に立ちたい。
吉田さんの発明の多くはそこから出発しています。発明してもほとんど「特許」を取ってきませんでした。
吉田勝さん:
「商人の気がないね、商売っ気がないね。これを知った人が誰か(商品化の)手を挙げてくれるのが一番いい」
■最新作は「電動除雪機」
最後に「最新作」を見せてもらいました。
こちらは「電動除雪機」。車輪がついた手押しの雪かきに電動の耕運機を合体させました。耕運機の刃を取り外して車輪を装着。重労働の雪かきを補助しようと発明しました。
吉田勝さん:
「高齢化してくると雪の重みも大変。(市販の)電動のもあるけど、費用がかさむ。まだ試作の段階なので、まず電動で動ければいい」
材料費は2万円以下。人の歩くスピードに合った、耕運機や車輪を探すのに苦労したそうです。
吉田勝さん:
「失敗が面白いんだよ、俺は。わからないことを挑戦するでしょ、そうするとまあ失敗だわな。でも俺は楽しい、だって次につながってるもん」
気負わず、楽しみながら発明を続ける吉田さん。長野のエジソンは「自然体」です。
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