日が沈んだ町を走るスカイレール。4月末で四半世紀の歴史に幕を下ろす =広島市安芸区(鴨川一也撮影)

斜面の住宅地に立ち並ぶ白い橋脚を伝うように、小さな青色の箱がのぼっていく。

町を一風変わった景観にしているのは、広島市安芸区の交通システム「スカイレール」。モノレールとロープウエーの技術を組み合わせた国内唯一の公共交通だ。

スカイレールは、JR山陽線の瀬野駅に隣接する「みどり口」駅と高低差約160メートルの高台にある「みどり中央」駅の全長1・3キロを5分ほどで結ぶ。

平成10年に開業し、高台の団地に住む約7千人の生活の足だったが、今月末で運行を終了する。

独自のシステムのため、部品調達や保守管理に多額の費用が掛かり、設備の更新が難しくなっていた。1日約1300人が利用しても、長らく赤字経営だった。

乗車定員は25人。車内からの眺望も格別だ =広島市安芸区(鴨川一也撮影)

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通勤で利用していた宮石将志さん(50)は「団地の売りだっただけに残念。広島カープの試合など市中心部の駐車場が少ないところに行くときにも便利だった」と語った。

人口減少や設備の老朽化、自動車利用の増加-。近年、ローカル鉄道や路線バスの廃止、減便が相次ぐなど、地方の公共交通を取り巻く環境は厳しい。スカイレールも同じだ。

運行会社と協議を行ってきた、みどり坂町内会の倉岡弘至会長(67)は「住民が車に乗れなくなったときのためにも、公共交通機関が町にあり続けることが大事」と訴える。

3月末、代替手段となる電気自動車の路線バス8台が導入された。団地内の15カ所に停留所が設置される。「高齢化が進む団地にとって、利便性は増すのでは」と倉岡会長。

「長い目で見たときに、住民の暮らしの変化に応じてダイヤなどを柔軟に変えてもらえたら」と期待を寄せる。

巨大な橋脚や駅は秋ごろから撤去が始まる。新しい路線バスの車体はスカイレールと同じ青色。町を走る晴れ渡った空のようなその色は、いつまでも在りし日の面影を町にとどめていくだろう。

(写真報道局 鴨川一也)

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