国立がん研究センターは14日、日本人の腎臓がん患者のうち7割が他国ではまれなパターンで遺伝子変異が生じていたとする研究成果を発表した。日本や欧州など世界11カ国の患者を対象としたゲノム(全遺伝情報)解析で判明した。何らかの環境的な要因で遺伝子に傷が生じているとみられ、予防法や治療法の開発につなげる。

記者会見で説明する国立がん研究センターの柴田龍弘分野長㊧(14日、東京都中央区)

がんの原因となる遺伝子の変異は加齢や喫煙のほか、紫外線などの環境要因でも生じる。近年の研究では個々の要因ごとに、変異の仕方や場所に特定のパターンがあることが分かってきた。

研究チームは今回、腎臓がんの中でも発症者が多い「腎細胞がん」を対象に、欧州や南米など発症頻度に差がある11カ国の患者962人のゲノムを調べた。遺伝子変異のパターンを解析して、どのような要因で発がんするのか地域差を探った。

その結果、日本人患者の72%で特徴的な「SBS12」という変異のパターンが見つかった。他国の患者では2%程度しか存在せず、原因は不明だ。2本あるDNAのうち、片側だけに変異が生じていることが多く、「化学物質の暴露などで見られる特徴と似ており、何らかの環境要因で生じている可能性が高い」(柴田龍弘分野長)という。

研究チームは今後、国内のほか、韓国や中国などのアジア地域でも日本人と同様な遺伝子変異のパターンがないか調査したい考えだ。DNAに生じた化学的な変化を分析し、原因となる物質や自然現象の特定も目指す。

今回の研究は英国王立がん研究基金と米国がん研究所が立ち上げた世界のがんを調査・研究する国際プロジェクトの一環で実施された。食道がんに続いて2つ目の疾患調査で、成果をまとめた論文は英科学誌「ネイチャー」に掲載された。

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