記者会見する公正取引委員会の岡田博己第四審査長(15日午後、霞が関)

九州・有明海の養殖ノリの出荷に関し、公正取引委員会は15日、熊本県漁業協同組合連合会(熊本市)と佐賀県有明海漁業協同組合(佐賀市)に独占禁止法違反(不公正な取引方法)で再発防止を求める排除措置命令を出した。両団体が組合員に収穫したノリの「全量出荷」を求め、不当に取引を拘束したと認定した。

公取委によると、両団体は遅くとも2018年10月以降、組合員に誓約書を提出させ、全てのノリを漁協を通じて出荷するよう求めた。誓約書には売れ残ったノリの処分を一任する規定も含まれ、組合員が独自に取引できないよう制限。商社とも組合員と直接取引しないとの覚書を交わして違反行為の実効性を高めていた。

命令では、漁協以外への出荷を妨げる行為をやめるほか、行動指針の作成と職員に対する周知徹底、第三者による定期的な監査を求める。

両団体は15日、代理人弁護士を通じて「ノリを漁協へ出荷させる強制はしていない」とコメント。処分の取り消しを求めて提訴する方針を明らかにした。

公取委によると、漁業団体と組合員の取引を巡って排除措置命令を出したのは初めて。岡田博己第四審査長は15日の記者会見で「漁業分野においても独禁法の理解が深まり、意欲ある漁業者の活躍する場が広がることを期待したい」と話した。

公取委は22年6月、両団体のほか福岡有明海漁業協同組合連合会(福岡県柳川市)など関係先を立ち入り検査。23年6月に福岡有明海漁連が提出した確約計画を認定した。

両団体は命令の差し止めを求めていたが、東京地裁は9日の判決で訴えを却下した。両団体は調査の過程で違法行為があったとして熊本地裁と佐賀地裁に国家賠償を求める訴訟も起こしている。

公取委によると、22年度の養殖ノリの市場規模は約835億円。有明海で収穫されたノリが約5割を占める。

  • 【関連記事】有明ノリ出荷、公取委命令の差し止め認めず 東京地裁
「日経 社会ニュース」のX(旧ツイッター)アカウントをチェック

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。