国際教養大の長期ビジョンを発表するモンテ・カセム学長=秋田県庁で2024年5月17日午後2時27分、高橋宗男撮影

 開学20周年を迎えた国際教養大(AIU、秋田市)は、今後10年間に取り組む「長期ビジョン2024-2033」を発表した。17日に記者会見したモンテ・カセム学長は、教学理念のリベラルアーツ(一般教養)教育を土台としつつ、「基本は人間力。いい人間がいい社会を構成するということをベースに、秋田と世界を結ぶグローバルな人材を育てたい」と強調した。

 AIUは全授業を英語による少人数で行い、新入生の全寮制や1年間の海外留学義務など、特色あるカリキュラムで知られる。多彩な人材を国内外に輩出しており、その教育システムは国内の他大学にも影響を与えてきた。

 カセム氏はこれまでの20年間で「本学の存在感を国内に確立できた」としつつも、「グローバルな競争の激化やデジタル人材需要、18歳人口の激減などの環境変化に耐えながら、新しい時代に向けてどう取り組むかが重要」と指摘。そのうえで「秋田県が抱える課題には人類に共通する普遍的な課題が多い。それを解決し、新しい価値を生み出すようなキャンパスにしたい」と語った。

 また、今後10年間の戦略として①研究力の高度化②それを可能とするための国内外のパートナーシップの強化③産学連携による新しい価値を生み出す仕組み作り――を挙げた。その上で、革新的な技術や解決策の基盤となる「イノベーションハブ」をキーワードに「国内外の大学や企業などとの連携で研究力を向上させ、育成した人材の力を課題解決に向かわせたい」と述べた。

秋田大は「情報データ科学部」開設へ

 時代の変化に応じた人材育成は、各大学が抱える共通の課題だ。秋田大(秋田市、南谷佳弘学長)もデジタル人材の養成を狙い、25年4月に新学部「情報データ科学部」を開設する準備を進めている。すでに学部新設のための関連資料を文部科学省に提出しており、6月にも審査結果が伝えられる見通しだ。

 情報学やデータサイエンスを学べる学部を設置している大学は全国的に増加傾向にあるものの、東北地方の国立大学には独立した情報系の学部がない。秋田大は学部新設により、地域のデジタル化を推進し、情報関連産業を牽引できる人材の育成を目指す。

 秋田大によると、再生エネルギー関連の情報分析の他、災害リスク予測などを学ぶ「防災・エネルギー情報系」▽コンピューターサイエンスを基礎とした応用技術を学ぶ「人間情報系」▽高齢者などの日常生活における動作支援に関する「知能ロボティクス系」――が3年時の選択履修科目群として設定され、学生の研究対象となる。

 また、情報データ科学部の新設に伴い、25年4月に現在の理工学部を「総合環境理工学部」に改組し、現在の4学科8コースを3学科に統合する計画。グリーン社会の実現に向けた科学技術分野の教育・研究を強化するとしている。【高橋宗男】

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