2023年1年間に県内で発生した65歳以上の高齢ドライバーによる交通死亡事故は前年比10件増の15件で、過去10年で最多だったことが20日までに県警のまとめで分かった。県警によると、高齢の運転免許保有者は増えている一方、免許証の自主返納数はピーク時に比べ減少。同課は「加齢に伴い身体機能が低下することを意識し、運転してほしい」と呼びかけている。(社会部・知念祥吾)

 「うそでしょ。全然見えない」。19日午前、北中城村の普天間自動車学校では65歳以上の高齢者約20人が、驚きの声を上げていた。車の周りには20本の三角コーンが置かれていたが、運転席からは死角となっていた。

 高齢者の事故を防ごうと、県警と損害保険ジャパン沖縄支店、沖縄トヨタ自動車の3者が連携して開いた安全運転講習会で、県内では初めての取り組み。沖縄市の内間安彦さん(76)は「乗車前の周囲の確認は大切だと、改めて痛感した」と話した。

 県警によると、23年の高齢者による死亡事故(15件)は、これまで最多だった18年の12件を上回った。物損や人身も含めた23年の事故は657件に上り、法令違反別で最も多かったのは「安全不確認」で29・8%。交差点を曲がる際に方向指示器を出さないといった「安全進行違反」が15・5%で続き、ともに全年齢の構成率を上回った。

 超高齢社会で、19年は18万553人だった65歳以上の免許保有者は、23年は21万313人に増加。一方、高齢者の免許証の自主返納件数は減少傾向にある。

 19年に起きた東京・池袋での高齢男性による死亡事故をきっかけに、全国的に免許証の返納者が相次いだ。県警によると、同年の県内の自主返納件数は5228件で過去最多。だが、その後は減少し続け、昨年は3265件でピーク時と比べ2千件近く減った。

 高齢ドライバーが増え続ける中、1月には浦添市の国道58号で80代女性が運転する車が仮設歩道に進入し、歩いていた男女2人をはねて死亡させる事故も発生。3月末時点で、6件の死亡事故が起きている。

 県警は「高齢運転者は全年齢より運転操作の誤りやアクセルなどの踏み間違いも多い」と指摘。企業と連携した講習会の開催など安全運転の啓発に力を入れていく。

(写図説明)VRシュミレーターで講習を受ける参加者=19日、北中城村・普天間自動車学校

(写図説明)高齢運転者による死亡事故の推移

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