木村隆二被告=和歌山市

岸田文雄首相が選挙応援で訪れた和歌山市の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件は、15日で発生から1年となった。首相らへの殺人未遂など5つの罪で起訴された木村隆二被告(25)は黙秘を続け、動機は不明のままだ。公判前整理手続きは開かれず、裁判の見通しは立っていない。

岸本周平和歌山県知事は15日の定例記者会見で、事件について「今も強い抗議の思いがある」と強調。「模倣犯が出ないように国としても議論を深めていただきたい」と述べた。

起訴状などによると、木村被告は令和4年11月~5年4月、兵庫県川西市の自宅などで黒色火薬約564グラムを製造し、爆発物2本を自作。昨年4月15日午前11時25分過ぎ、首相らを殺害する目的で、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港の演説会場にパイプ爆弾を投げ込み、聴衆と警察官の計2人にけがをさせたとされる。

和歌山県警は当時、自民党県連など主催者側に聴衆エリアの出入り確認などを求めたが、「関係者以外は来ない」などと説明され、金属探知検査は見送られた。警察庁が昨年6月に公表した検証報告書は、来場者の識別方法など実効性の確認が不十分で、警察側は「綿密な協議を行う必要があった」などと指摘した。

木村被告は、参院議員の被選挙権年齢(30歳以上)の規定など現行の選挙制度に強い不満を持っていたとされる。選挙制度が違憲だとして国を相手に訴訟を起こしたが、1、2審とも棄却。捜査関係者によると、火薬の原料を購入したのは4年11月ごろで、1審棄却の時期と近接していたという。

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