小林製薬が製造した紅麹(こうじ)原料を含む機能性表示食品の問題を受け、消費者庁の専門家検討会は21日、制度見直しの提言案を固めた。健康被害の報告や生産・品質管理の基準をルール化し、再発防止につなげる。

機能性表示食品の在り方を巡り、消費者庁は4月中旬、医療や食品衛生などの分野の専門家からなる検討会を立ち上げた。関係団体へのヒアリングを重ね、5月21日の第5回会合までに大きく2つの提言案の柱が固まった。

まず被害報告だ。小林製薬の一連の問題では医師の症例報告から消費者庁への連絡まで2カ月以上かかったことが問題視された。

検討会は医師の診断で健康被害の「疑いが否定できない場合は症状の重篤度に関わらず報告させる」方向で調整している。現在は健康被害が「発生及び拡大の恐れがある」と企業側が判断した場合のみ速やかな報告を求めている。

企業が報告の有無で迷わないようにルールを明確化する狙い。一方で風評被害などの影響を懸念する意見もあり、報告された情報の公表については一定の基準をつくることを提案する方針。

生産・品質管理についてもサプリメントを対象に基準を設ける方向で検討している。現在は一般食品と同様の取り扱いになっているが、医薬品で義務付けられている製造時の管理基準(GMP)などを念頭に一定の基準の順守を求める考え。順守状況を必要に応じて検査するなど国が監視できる仕組みも設ける。

製品の表示についても議論のテーマとなっている。機能性表示食品は企業が食品機能の科学的根拠や安全性などを届け出れば販売できる。国が安全性を審査して販売を許可する特定保健用食品(トクホ)と販売過程が異なるが「両者の違いが消費者に伝わっていないのではないか」との意見が出た。

医薬品との違いの明確化や飲み合わせの注意事項を表示するよう求める声も上がった。21日の会合では、トクホや医薬品との違いを明確にし、飲み合わせの危険性を簡潔に記すことの重要性も提言に盛り込む方針でまとまった。

「紅麹」製品による健康被害の拡大を受け、林芳正官房長官は3月、厚生労働省と消費者庁に健康被害の情報収集体制のほか、機能性表示食品の制度のあり方を検討するよう指示していた。検討会は23日に開く次回会合で方針を示し、消費者庁はそれを踏まえ、5月末までに制度の見直し案をとりまとめる。

厚労省によると、「紅麹コレステヘルプ」などを摂取した後に健康被害を訴えて医療機関を受診した人は5月19日時点で延べ1594人。276人が入院し、5人の死者が出た。同社は現在も原因究明を続けている。

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