シンガポール航空の旅客機が乱気流に巻き込まれ、乗客の英国人男性(73)が死亡、70人以上が負傷する惨事が起きた。乱気流の発生は世界で増加傾向にあり、日本でも人ごとではない。
通路とトイレで重傷
2004~23年、日本の運輸安全委員会の調査対象となった大型旅客機の航空事故は67件で、55%にあたる37件は乱気流が原因だった。
負傷者は計118人(乗客62人、客室乗務員56人)で、このうち重傷者は44人(乗客18人、客室乗務員26人)だった。
重傷者のうち、乗客10人はシートベルトがない通路やトイレにいた。客室乗務員24人も機内食などを準備するギャレーや通路におり、シートベルトを着用できない状態だった。
シンガポール航空の事故は、朝食の提供中に起きたため、コーヒーが激しくこぼれ、食器が乱れ飛んだという。
運輸安全委員会によると、航空会社は温度の高い飲み物を提供しないなどの防止策を講じているという。調査対象となった20年間の航空事故で、やけどの被害は1件だけだった。
晴天乱気流が「著しく増える」
乱気流の種類は複数あるが、調査では旅客機の事故原因の7割を、積乱雲の影響による雲中乱気流と雲がない空域で起きる晴天乱気流が占めた。
特に晴天乱気流は、レーダーに映らず、肉眼でも見えないため、発見が難しいとされる。また、地球温暖化によって世界的な発生の増加が指摘されている。英レディング大のポール・ウィリアムズ教授は、日本を含む中緯度地域で「著しく増える」と予測している。
運輸安全委員会の担当者は、飛行機に搭乗する際の注意点として▽揺れることを前提とする▽着席中も常にシートベルトを腰の低い位置で締める▽トイレの利用は可能な限り地上で済ます▽通路で揺れた際、低い姿勢でひじ掛けを抱え込む――などを挙げる。【國枝すみれ】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。