全国の漁連などが漁船を持たない漁業者に船をリースし、漁業所得の増額を目指してもらう取り組みを助成する水産庁の事業について会計検査院が調べたところ、漁業以外の収入を漁業所得に含めて算出する不適切な運用が見つかったことが、29日分かった。

検査院によると、不適切な算出があった漁業者への助成金は計約74億円に上る。いずれも制度への理解不足に起因する算出ミスで、悪質性は低いとみられる。

検査院が水産庁に対し、漁業所得として取り扱うべき収入や支出の項目を具体的に示させるなどの改善を求めた。

事業は水産庁がNPO法人「水産業・漁村活性化推進機構」を通じて、漁連などがリース用の漁船を取得する費用の半額までを国費で助成する。

リースを受けた漁業者が5年以内に漁業所得を10%以上増やすなどの数値目標を定め、リース料を漁連側に支払うとともに漁業所得の詳細を報告する。個人経営の場合、漁業以外による収入や支出を含めてはならないとしている。

17道府県の漁連など19団体からリースを受けた725人の実態を検査院が調べたところ、このうち459人が警戒に漁船を使ったり、海底を清掃したりした際に得た収入や共済金を漁業所得として算出するなどしていた。制度を正確に理解していなかったとみられ、故意に漁業所得を水増ししていたケースはなかったという。

検査院によると、水産庁が事業を説明するため作成した資料に、警戒や監視、海底清掃などの用途で漁船を使った場合は漁業所得に含めないとまでは具体的に明示していなかった。

水産庁は「何が漁業所得に当たるかの周知が不十分だった。指摘を踏まえ、事業が適正に行われるよう努めたい」とした。〔共同〕

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