公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 青森市発注の新型コロナウイルス感染者の移送業務で談合したとして、公正取引委員会は30日、旅行大手のJTB(東京都品川区)など旅行会社4社の独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、再発防止を求める排除措置命令を出した。新型コロナの関連業務を巡り、独禁法違反を認定するのは初めて。

 ほかに命令を受けたのは、東武トップツアーズ(東京都墨田区)▽日本旅行東北(仙台市青葉区)▽名鉄観光サービス(名古屋市中村区)。昨年11月の公取委による立ち入り検査では、近畿日本ツーリスト(東京都新宿区)も対象だったが、課徴金減免制度(リーニエンシー)を利用して自主的に違反を申告したため、命令を免れた。

 公取委によると、5社の各青森支店の担当者は2022年4月、新型コロナ患者を自宅から宿泊療養先などに移送する業務の指名競争入札で、受注予定社をあらかじめ決め、残りの社が業務の再委託を受けることで合意。5件あった青森市発注の入札を近畿日本ツーリストが落札し、他社に再委託していた。落札総額は約3200万円で、5社が均等に利益を分け合う仕組みになっていた。

 入札前、5社の関係者が青森市の担当者に「移送業務を5社共同で実施したい」と伝えたり、市の担当者が入札参加資格を持つ事業者を関係者に教えたりしていたことも発覚。公取委は、原則禁止されている再委託の可能性を市が認識できたうえ、談合を誘発する恐れがあったとして、市に再発防止を申し入れた。

 公取委は今回初めて、19年の独禁法改正で導入された「密接関連業務」を認定した。課徴金の算定は談合などで直接得た不正な売り上げのみを対象としてきたが、落札者が談合参加者に業務を再委託して利益を確保させる「回し」と呼ばれる行為についても算定対象となった。ただし今回は、課徴金算定額が100万円未満のため納付命令は見送られた。

 関係者によると、5社の一部は青森市内の学校の修学旅行を請け負っているものの、学校との契約として処分の影響は受けない見通しという。【渡辺暢】

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