重度の脳障害で判断力を欠いていた男性が病死直前に自宅の売買契約を不当に結ばされたとして、男性の遺族が大阪市浪速区の不動産会社と会社代表に賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は30日、請求通り2150万円の支払いを命じた。葛西功洋裁判官は「代表が男性の意思に基づかず、死亡日以降に契約書を作成した」と判断した。
判決などによると、男性は大阪市東成区に3階建て住宅を所有し、1人で暮らしていた無職の柳発秀(はつひで)さん(当時51歳)。2017年に交通事故の後遺症で高次脳機能障害と診断され、認知機能が低下していた。
柳さんは22年6月29日に死亡。自宅を2200万円で不動産会社に売却したとされ、契約書の日付は死亡前日だった。その1カ月後に自宅は別の会社に2150万円で転売されており、遺族側は「認知機能が低下し、契約内容を理解できたとは言えない」と主張。転売代金と同額の賠償を求めていた。
判決はまず、契約書の内容について「契約締結の場に同席していたはずの柳さんの署名がない」と指摘。柳さんの遺品には契約書の原本や写し、実印が見つからないことなども踏まえ、不動産会社側が柳さんの死亡後に無断で契約書を作成したと認めた。
そのうえで、自宅売買代金で柳さんの借金を相殺したとする不動産会社側の主張に対し、「客観的証拠による裏付けがない」などと退け、会社側の賠償責任を認めた。
判決後、大阪市内で記者会見した柳さんの兄、南秀(なんしゅう)さん(57)は「判決に納得している。弟が亡くなった後は毎日泣き続けていたが、これで弟に『無念を晴らせたよ』と声をかけてあげられる」と話した。【郡悠介】
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