現地で建て替えられた文化堂の新しいビル。文具店のほかイベントスペースなどが入る=福島市上町で2024年6月3日午後0時27分、錦織祐一撮影
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 2022年3月に最大震度6強を観測した福島県沖地震は、福島市中心街にも甚大な被害をもたらした。市民に長年親しまれていた老舗文具店「文化堂」のビル(福島市上町)も大規模半壊となって取り壊されたが、現地で建て替えられ、6日に再オープンする。3代目社長の中野義久さん(45)は「災害に負けてはいられない。ここから福島の街なかの文化を再び発信していきたい」と再起を期す。

 文化堂は1926(昭和元)年創業で、福島市の中心街で文具店を営んできた。旧ビルは61年に県庁通り沿いに建設された地上5階、地下1階建てで、後に文化堂が取得した。1階に文具店。2階のセレクトショップ「ペントノート」は万年筆を中心にそろえてカフェも併設し、老若男女に親しまれた。20年には1階の一角を改装して総菜スタンドもオープンし、勤め人らの人気を集めた。

文化堂の旧ビル。2022年の県沖地震で大規模半壊となった=文化堂提供
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 22年3月の地震では福島市も震度6弱を記録した。ビル高層階を長時間にわたって揺らす長周期地震動が大打撃を与え、旧ビルは大規模半壊となった。11年の東日本大震災に加え、21年2月にも最大震度6強の地震に見舞われ、その度に補強工事を重ねていた。「それまではなんとか耐えましたが、あの地震でとどめを刺された。愛着のあるビルだっただけに当時は何も考えられませんでした」と中野さんは振り返る。

 旧ビルは公費解体され、文具店とペントノートは22年5月に同市御山の空き店舗に移転。人通りが大幅に減ったため新たな目玉を作ろうと天然酵母のベーグル店を併設した。中野さんは県庁通りの商店街振興組合理事長も務めており「公費解体という形で血税を使わせていただいた以上、街なかの復興に貢献しなければ」と現地での建て替えを決めた。

文化堂の中野義久社長=福島市御山で2024年5月28日午前10時43分、錦織祐一撮影
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 新ビルは鉄骨4階建て延べ床面積960平方メートルで、コンセプトは「街の未来へ向けてのランドマーク」。逆ひな壇形に建てられ、最大5メートルのひさしを設けることで、街の人々のさまざまな活動を呼び起こす願いを込めたという。文具店とペントノートが戻り、移転で生まれたベーグル店も入るのに加えて、1階の県庁通りに面した一角にはイベントスペースを整備した。特に福島市の中心商店街には人々が集える場所が不足していると中野さんは見ており、商店街の仲間の藪内義久さん(45)も隣のビルに創業支援のチャレンジショップやものづくり作家の工房を計画している。

 度重なる災害に見舞われる福島。「もちろん街への思いは強いですけど、自分たちだけでは何もできない。皆さんのおかげで復興できたこのビルから、皆さんと一緒に魅力ある街をつくっていきたい」との思いを新ビルに込める。【錦織祐一】

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