大川原化工機の冤罪事件を巡る国家賠償訴訟の控訴審第1回口頭弁論を前に東京高裁に向かう原告の大川原正明社長(右から2番目)ら=東京都千代田区で2024年6月5日午前10時29分、巽賢司撮影

 化学機械メーカー「大川原化工機(おおかわらかこうき)」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件を巡り、社長らが東京都と国に約2億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が5日、東京高裁であり、会社側は「事件は捏造(ねつぞう)された」と改めて訴えた。都と国側は捜査は適法だったとして請求棄却を求めた。

 社長らは軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反に問われ、2020年3月に逮捕・起訴されたが、東京地検が21年7月に起訴取り消しを公表した。

大川原化工機の冤罪事件を巡る国家賠償訴訟の控訴審第1回口頭弁論後、記者会見する大川原正明社長(左から2番目)ら=東京・霞が関の司法記者クラブで2024年6月5日午前11時44分、巽賢司撮影

 国賠訴訟の1審・東京地裁判決(23年12月)は、警視庁公安部と地検が、同社の装置が輸出規制品に当たるかを確認する温度実験を尽くさなかったとして、捜査を違法と認めた。会社側は、公安部が経済産業省の輸出規制省令を独自解釈して立件に踏み切ったとも主張していたが、1審はこの点は退けていた。

 控訴審で会社側は、公安部が作成したとされる捜査メモの写しを新たな証拠として提出した。メモには、省令解釈に関する公安部と経産省の担当者のやり取りが記録されているとし、公安部が不当な働きかけによって独自解釈を経産省に認めさせた経緯が記されていると主張した。

 一方、都と国側は、公安部の省令解釈には誤りはないと反論。「従業員50人以上を聴取しており、必要な捜査を尽くした」などとして1審の敗訴部分の取り消しを求めた。【遠藤浩二】

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