日本テレビのロゴ=東京都港区で2023年4月、屋代尚則撮影

 1991年の長崎県雲仙・普賢岳大火砕流に関して、日本テレビは3日、運営するX(ツイッター)への「報道関係者や警察、消防、海外の火山学者など多くの人が犠牲になりました」との投稿を削除した。この際、「人災とも言える」と指摘する第三者の書き込みも共に削除し、インターネット上で批判が集まっている。

 日テレ広報部は取材に対し、第三者の書き込みは誤って削除してしまったとした上で「誤解を招くような対応でお騒がせしたことをおわび申し上げます」とメールでコメントした。

 問題となっているのは、日テレが天気や防災情報を発信している「@ntvsorajiro」のアカウント。43人が犠牲になった大火砕流の発生から33年を迎えた3日、長崎県島原市での追悼式の様子などを伝えるニュースとともに担当者がコメントを投稿した。

 その後、第三者が投稿を補足するため「コミュニティノート」という機能を使って「避難勧告が出ていた地域にマスメディア関係者が立ち入って取材」したために「一度避難した消防団員等も見回りのため現地に戻りました」と指摘。「マスメディアによる人災とも言える事故である点を重大な背景として補足します」とも記した。

 しかし、日テレ側は担当者のコメントを付けた投稿を削除したため、補足情報の書き込みも一緒に消えた。その上で、再度同じような投稿をしたため、インターネットでは「反省も何も無い」などと非難の書き込みが寄せられている。

 日テレ広報部によると、投稿後、担当者が自分のコメントだけを消すつもりだったが、投稿そのものを削除。しかし、システムが自動的に同じニュースを再投稿したという。

 実際に大火砕流が発生した当時、周辺は避難勧告が出されていたが、報道合戦が過熱。雲仙・普賢岳火口から約4キロ離れた撮影ポイント「定点」周辺に集まっていた毎日新聞社員3人を含む報道関係者とタクシー運転手が巻き込まれた。

 さらに数百メートル下った建物を拠点に活動していた消防団員らも犠牲となった。大火砕流発生の2日前には、報道関係者の一部が無人の民家から電源を無断使用していたことが発覚し、消防団は定点近くで警戒に当たっていた。

 日本新聞労働組合連合などが2021年に島原市で開いた災害報道を考える集会では、災害対応に当たった元島原市職員が「(住民側から)当時はマスコミのために犠牲になったという声が多く聞かれた」と指摘している。【蓬田正志】

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