ダム湖に面した斜面に建物が並ぶ旧富山村の中心地。2005年から15年間で人口が70%減となった=愛知県豊根村富山で2023年1月12日午後2時19分、川瀬慎一朗撮影

 三河山間部や半島先端部を中心に人口が大きく減少していることに危機感を抱く愛知県は、市町村を交えた「人口問題対策検討会議」を設置した。コミュニティーの存続が危ぶまれる地区もあるなど人口減少は県全体に広がっており、県と自治体が一体となって対策を探る。

 平成の大合併前の旧自治体区分で2005年と20年の国勢調査の人口を比較したところ、旧富山村(現豊根村)が70%減、東栄町が32%減、旧津具村(現設楽町)が31%減となっており、人口の減り幅が特に大きい。

 そのほか旧小原村、旧足助町、旧下山村、旧旭町、旧稲武町(いずれも現豊田市)▽旧鳳来町、旧作手村(いずれも現新城市)▽南知多町▽旧設楽町(現設楽町)▽旧豊根村(現豊根村)でも20%以上減るなど、計20地区で10%以上の人口減となっている。

愛知県内の人口減少率

 県全体の人口でみると、05~20年の15年間は4%増となったものの、直近4年間は減少が続いている。

 検討会議には、人口の減少幅が大きい20地区がある11市町村のほか、29市町村がオブザーバーとして参加。5月17日に県庁で開かれた初会合で、会長を務める大村秀章知事は「人口減少地域が県全体に広がっており、重要課題になっている。現状と課題について意見交換し、一緒に取り組む」とあいさつした。

 三河山間部に位置する設楽町、東栄町、豊根村の首長らは、移住者が居住地を決める時に情報通信環境を重視している現状を紹介し、「一つの自治体だけでは対応できない。連携していきたい」と県の協力を求めた。

人口問題対策検討会議の初会合=愛知県庁で2024年5月17日午後2時57分、荒川基従撮影

 また、田原市の山下政良市長は「高い未婚率が第一次産業の担い手不足の大きな原因になっている」と指摘した。

 一方、広い中山間地域と合併した豊田市の太田稔彦市長は、都市部と農山漁村との交流人口や関係人口について言及。「都市と農山漁村の距離を近くして県民のライフスタイルの多様性を高めれば、『愛知はおもしろい』と選ばれる地区になるのではないか」と提案した。

 検討会議では今後、最初の課題として「農林水産業の振興」「地域交通の確保」「空き家の活用」について、三つのワーキンググループに別れて検討する。【荒川基従】

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