クジラ処理を巡る随意契約の調査結果について記者会見する大阪市職員=大阪市北区で2024年6月7日午後2時3分、鈴木拓也撮影

 大阪市は7日、大阪湾で死んだクジラの処理を委託した海運業者との随意契約について、調査報告書(5月22日付)を公表した。契約を担当した大阪港湾局が予定価格の約9割を業者側の見積もりに基づいて算出していたことが明らかになった。

 報告書によると、港湾局は、予定価格の根拠となる業務委託設計書で、委託料を8063万円と算出。このうち7178万円を業者の見積もりから採用していた。その理由として、クジラの死骸処理が特殊な業務で緊急性もあり、市の基準だけでは積算が困難だったことを挙げている。市と業者は2023年3月31日、8019万円で契約した。

 ところが、2日後の4月2日になって、業者側から作業費の見積書が追加提出されていたことが判明。積算の根拠資料の一部を欠いたまま、契約を結んでいたことが分かった。

 報告書を受けて、市入札等監視委員会(委員長、森本浩久・大阪府警察信用組合理事長)は7日、6項目にわたる契約手続きの問題点への意見を公表した。

 一連の問題では、港湾局の経営改革課長(当時)が契約金額の交渉期間中に、内規に反して業者側と会食していたことが判明している。監視委は「職責に鑑みると、看過できない重大な問題」と指摘。業者の意をくむ形で交渉をリードした課長の言動についても「契約相手方に立って、業者が合意できる金額に近づける議論に終始したと受け止められても仕方がない」などと批判した。

予定価格を決める根拠資料が不足

 契約手続きの不備にも言及した。予定価格を決めるための根拠資料が不足し、意思決定過程を記した公文書も確認できなかったとして、「価格の積算根拠や契約金額には疑義が残る」と意見した。港湾局に対し、内規違反などの実態を調査して改善結果を報告するよう求めている。

 監視委の指摘に対し、横山英幸市長は7日、報道陣に「市民の皆様にご心配をおかけし、心からおわびしたい」と述べた。市は弁護士ら外部監察専門委員に委託してさらに調査を進める。

 市などによると、雄のマッコウクジラは23年1月9日、淀川河口付近で見つかった。全長約15メートル、体重約40トンで「淀ちゃん」と呼ばれたが、同13日に死んでいるのが確認された。

 死骸にガスがたまり爆発のおそれがあるとして、市は処理を急ぎ、市内の海運業者に海洋沈下を依頼。業者は同19日、作業船で紀伊水道沖に運んで沈めた。市は緊急性や特殊性が高いなどとして、競争入札や同業者への相見積もりを経ない形の随意契約を選んだ。

 1月15日の協議で、業者は約2000万円と費用の概算を伝えたが、2日後には約6000万円を提示した。クジラを処理した後の同25日、業者は8625万円の見積書を提出。一方、港湾局は3月初めまでは2000万~4000万円台で試算していたが、同31日にその2倍超の8019万円で契約した。

 毎日新聞が入手した市の内部文書では、経営改革課長が3月25日、「私の感覚では、できれば8000万円で持って行くべきだ」などと局長らにメールで進言していた。【長沼辰哉、鈴木拓也】

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