鹿児島県警本部=白川徹撮影

 鹿児島県警が、刑事事件の裁判のやり直しを求める再審請求などで弁護側に利用されるのを防ぐため、作成済みの捜査書類を速やかに廃棄するよう促す内部向けの文書を作成していた疑いがあることが、関係者への取材で判明した。過去の再審事件では、弁護側の求めで開示された捜査資料で再審開始につながったケースもあり、再審事件に詳しい弁護士は「事実なら、大変な問題だ」と指摘する。

 関係者によると、県警が作成して捜査員らに配布した疑いがある文書は、2023年10月2日付の「刑事企画課だより」。24年4月、事件の容疑者や被害者の実名、捜査状況を外部に漏らしたとして、地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕、その後起訴された曽於(そお)署の巡査長(当時)、藤井光樹被告(49)が流出させた資料の一部とみられるという。インターネットメディアの関係者が県警の内部文書としてサイト上に掲載した。

 文書は「捜査資料の管理について」と題し、「最近の再審請求等において、裁判所から警察に対する関係書類の提出命令により、送致していなかった書類等が露呈する事例が発生」などと説明。「再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!」と強調し、「未送致書類であっても、不要な書類は適宜廃棄」するよう呼びかける内容だった。

鹿児島県警の情報漏えいを巡る主な経過

 毎日新聞は8日、県警に文書は県警作成で間違いないか照会したが、県警は「担当者が不在で分からない」と回答した。

 過去の再審事件では、捜査側が当初は「存在しない」とした証拠が見つかり、再審開始につながった例も少なくない。1985年に熊本県宇城(うき)市(旧松橋(まつばせ)町)で男性が刺殺された「松橋事件」では、元受刑者の男性が「燃やした」と自白したはずのシャツ片を検察が所持していたことが判明し、再審開始とその後の無罪につながった。

 日本弁護士連合会再審法改正実現本部本部長代行の鴨志田祐美弁護士は「警察は本来、全ての捜査資料を検察に送致して開示すべきなのに、廃棄しようとは言語道断だ」と話す。

 県警の情報漏えいを巡っては、インターネットメディア「ハンター」が23年10月、県警の内部文書を掲載。県警は24年3月に情報流出があったと認め、翌4月に曽於署の巡査長を逮捕した。関連の捜査で前県警生活安全部長の本田尚志容疑者(60)=国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕=に別の情報漏えい容疑が浮上していた。【取違剛】

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