合同会社説明会に集う学生たち。しかし最近は、学生と企業の「出合いの場」は多様化しつつある

 近年、大学生の就職活動で生成AI(人工知能)や就活エージェント、逆求人サイトなど、就活の省力化を可能にするサイトやサービスを利用する就活生が増えている。従来とは異なる、こうした手軽な方法での就活の是非について、就活生自身はどう考えているのか。現在、就活真っ最中の大学4年生4人に語り合ってもらった。【司会・まとめ、上智大・古賀ゆり(キャンパる編集部)】

地道な作業を効率的に 広がるAI利用

 ――就活で生成AIを利用したことはありますか?

 A 企業に提出するエントリーシート(ES)を書いている時に、自分一人で考えていると煮詰まってしまうことがあるんだよね。そんな時、効果的なエピソードを選ぶためのアドバイスを、チャットGPTに求めたことがある。また、自分が書いた文章を添削してもらい、読みやすい文章に直してもらった。

 B 私も、自分が書いた文章の添削でチャットGPTを使った。ただ、その出来に納得がいかなかったことと、プライバシーに属する個人情報をネット上に入力することが不安になって、使うのをやめちゃった。

 C 私は企業研究をする際に、効率的に調べるために利用した。企業の特徴などに関する質問をAIに投げ、その答えを基にさらに自分でも調べていった。

 D 私は、就活を始めたばかりの頃、お試し感覚で文章の添削や業界研究のために、参考程度に使ったことはある。

 ――就活で生成AIを使うメリットとデメリットは何だと思いますか?

 A メリットは、自分が書いたガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を、頭の良い人に添削してもらう感覚で、客観的な評価やアドバイスをもらえることだね。デメリットは、正直そこまで感じていないかな。

 B メリットについては私も同じ考え。ただAIは、使い手の経験を踏まえて文章を作るわけではない。だから、AIが作ったガクチカの文章には、具体例が入りにくく、面白みがない。それがデメリットかな。

 C メリットは、タイムパフォーマンスが良いところ。企業研究をする時に、短い時間で新しい情報を見つけ出し、そこから気づきを得られること。デメリットは、AIを通じて調べた内容は、自分で考えたわけではないため、案外誰にでも言えるような内容になること。面接で深掘りされると困るような内容になってしまう。

補助的な利用なら抵抗感少なく

 ――生成AIの手を借りることに、違和感や抵抗感は感じなかったですか?

企業に提出するESをチャットGPTを用いて添削した事例。表示されたアドバイスを参考にしてESを仕上げる学生も珍しくない

 D 就活を始めた頃は、ESをどのような感じで書いたらいいのか、全然分からず、書き方を探るために使った。そのような使い方であれば、使うのもありなのではないか。補助的に使う人は多いと思うし、そのような使い方では抵抗感はあまり感じないかな。

 C 私も全部、AI頼みにするということはない。全面的にAIに頼ると、面接で深掘りされた時に答えられなくなると思うから。ヒントをもらう程度に使うのがいいのではないか。

 A 私も皆と同じく補助的な役割として使っているため、罪悪感は薄い。

使う理由とやめる理由

 ――最近は、「あなた向きの企業」を次々に紹介してくれる逆求人サイトや就活エージェントなどのサービスが登場していますが、利用していますか?

 B 自分は面接の練習があまりできていなかったため、自己分析と面接の練習のために、いろいろな就活エージェントサイトに登録し、面談を行った。しかし興味がない業界を紹介された時に断りにくいのが難点かな。「ちょっと説明会だけ聞いてみます」とお茶を濁す形になってしまったため、このサービスは自分には合わないと感じた。

学生向けに大学が開催した就活支援講座。こうした講座や個別相談会を開く大学は多いが、最近は学生に就活エージェントの利用を勧めるケースも出始めている

 D 逆求人サイトや就活エージェントに登録していた時期もあったが、ひんぱんにメールや電話が来て対応するのがだんだん面倒になってきた。またエージェント側から見ると、自分は案件の一つにすぎず、必ずしも個々の就活生の都合を最優先してくれるわけではないなと。だからあまり深く関わらないようにしよう、という感じ。

 C 私は、大学のキャリアセンターで就活エージェントの利用を勧められた。だけど私も、就活生の意向をどこまで尊重してくれるか不安だったので、実際には使っていない。ただ、就活エージェントは、仕事に関する情報はたくさん持っているため、選択肢の一つとして持っておくのもよいのでは。

 A 私自身は、就活エージェントも逆求人サイトも使ったことはない。でもバイト先の先輩が、就活エージェントを使っていて、ESや面接の対策をしてもらい、自分の行きたい業界で、早い段階で内定を獲得できていた。サービスが合う人もいるのだと分かった。

「向く」「向かない」が分かれるサービス

 ――自分の判断力だけでなく、こうしたマッチングや代行のサービスを使って就活することに抵抗感はないですか?

 D 私は使うのをやめちゃったけど、周りを見ると、結構、賢い使い方で利用している人もいるんだよね。企業側と就活生を、効率よく結びつけることができるという意味では、率直に便利な機能だなと思う。

 B 私も、そのようなサービスを利用するのに向いている人と向いていない人がいると思うな。利用してうまくいく人もいるため、うまく活用できる人は利用したらよいと思う。

 A 私は就活本や就活情報サイト、大学のキャリアセンターを活用して企業選びを行った。でもこの手のマッチングサービスをうまく活用したら、もっと視野が広くなっていたのかな、という気はする。賛否両論あることは分かっているが、マッチングで新たな企業を知ることができるため、別に悪いものではないと思っている。使う側がサービスに納得感を持って使うことができているのならば、よいのではないか。

 ――ありがとうございました。

〈参加学生のプロフィル〉

A=文芸学部(就活中)

B=文化構想学部(同)

C=文芸学部(同)

D=教育学部(同)

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