雪崩事故が発生したスキー場=栃木県那須町で2017年3月27日午後4時10分、本社ヘリから長谷川直亮撮影

 栃木県那須町の茶臼岳で2017年3月、部活動で登山講習会に参加していた県立大田原高の生徒ら8人が雪崩に巻き込まれて死亡した事故。業務上過失致死傷罪に問われた教諭と元教諭の3被告が12日、禁錮2年とした宇都宮地裁判決を不服として控訴し、遺族からは「どうしてまだ争うんだ」などの声が上がった。

 5月30日に実刑判決を受けたのは、講習会の現場責任者だった猪瀬修一被告(57)と、死亡した8人がいた班を引率していた菅又久雄被告(55)、けが人が出た後続の班を引率していた渡辺浩典被告(61)。

 判決によると、3被告は17年3月27日朝、前日からの降雪を考慮して予定していた登山から計画を変更し、スキー場周辺での雪中歩行訓練の実施を決めた。訓練中の午前8時半ごろに発生した雪崩により、生徒7人と教諭1人を死亡させ、5人にけがをさせた。

 3被告の控訴を受け、山岳部の第3顧問だった教諭の毛塚優甫さん(当時29歳)の父辰幸さん(72)は「8人の死の責任と向き合い、判決を受け入れてほしかった。やりきれない思いだ。自分たちの罪と向き合った上での心からの謝罪を望んでいたが、それが遠のき残念だ」としたうえで「判決の中で明確に責任の所在が示されたのに、どうしてまだ争うんだ」と控訴に疑問の声を漏らした。

 佐藤宏祐さん(当時16歳)を亡くした父の政充さん(55)は「控訴理由が分からないので、なんとも言えない複雑な気持ち。控訴は(被告の)当然の権利だと理解はしているが、遺族としては1審の判決を素直に受け止めてほしかった」と言葉を選びながら話した。東京高裁に場を移して公判が続くことに「引き続き同じ事を訴えていくしかないと思っている。残念だ」と言葉少なだった。

 判決では、主な争点となっていた雪崩の予見可能性について、現場の地形や当時の積雪の状況、3被告が雪崩に関する知識を有していたことを理由に「危険を容易に予見できた」と指摘。事故を未然に防ぐ注意義務を怠り訓練を開始させたことや、菅又と渡辺両被告が引率中に生徒らを退避させず、漫然と訓練を継続させ安全確保の措置を講じなかった過失を認定した。

 量刑は「8人の生命が奪われた結果は非常に重大」「相当に重い不注意による人災であった」として実刑を言い渡した。

 弁護側は公判中に「注意義務は怠っておらず、雪崩の発生は予見できなかった」などとして、一貫して無罪を主張していた。

 被告側の代理人弁護士は「(控訴について)コメントすることはありません」とコメントした。

 また、阿久沢真理県教育長は「引き続き裁判の経過を見守り、このような痛ましい事故を決して忘れることなく、今後とも安全管理・危機管理を徹底し、再発防止に取り組む」とするコメントを発表した。【池田一生、藤田祐子】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。